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実相院門跡展EC

『実相院門跡展―幽境の名刹―』で門跡寺院を知る

平安時代より貴族の隠棲地でもあった、京の奥座敷・岩倉に在る実相院。昨年、京都市文化財に指定された「実相院文書」等を通して明らかになった、知られざる歴史が紐解かれる展覧会が4月17日(日)まで京都文化博物館で開催されています。

(※この記事は平成28年2月19日(金)に行われたプレス内覧会での取材をもとに掲載しています)

実相院門跡展 - 竹に虎図
竹に虎図杉戸がメインビジュアル
格式高い門跡寺院とは

京都には「門跡」とつく寺院がいくつもありますが、「門跡寺院」をよく知らない人も多いかもしれません。門跡寺院とは皇室にゆかりのある人々や上流貴族出身の僧侶が住職を務めた、非常に格式の高い寺院のこと。寛喜元年(1229)に草創した実相院もそのひとつで、滋賀県の園城寺(三井寺)を頂点とする寺門派の有力門跡でした。現在の実相院の客殿や表門は、享保6(1721)年に東山天皇の中宮承秋門院御所の御殿の一部を移築したもので、ここからも皇族との深い関わりがよくわかります。

御所から下賜されたアートの宝庫

前述の御殿のほかに、御所から下賜されたものがいくつかあり、客殿内部にはまっている障壁画もこれに当たります。実相院に現存する障壁画は承秋門院御所にあったものではないとされていますが、朝廷ゆかりの絵画など煌びやかなものが目を引きます。狩野派による襖絵や杉戸絵の障壁画の数々は圧巻のひと言。前後期でほとんどが展示替えされ、この展覧会で実相院にあるほぼすべての障壁画が観られます。しかも、10面、16面、13面など襖絵がずらりと並ぶダイナミックな展示は迫力満点。見惚れてしまいます。

実相院門跡展 - 狩野永敬 花鳥図襖
狩野永敬 花鳥図襖(花鳥の間)10面/前・後期
実相院門跡展 - 狩野派 竹に虎図襖
狩野派 竹に虎図襖 4面/前期

このほかにも、歴史の変遷を眺めてこられたご本尊「木造不動明王立像」や将軍家との関わりが分かる「足利尊氏御判御教書」や「足利義政御判御教書」など、中世の文書も展示されています。ここには花押(かおう)も記されていて興味深いです。

実相院門跡展 - 寺領判物
寺領判物には後に盛んに用いられた花押も見られる

「古文書を紐解いていくと、門跡寺院として格式高い実相院の姿だけではなく、実相院の僧侶が岩倉の人々の相談役であり、地域と深く関わり合いがあったことがよくわかります」と京都市歴史資料館の宇野日出生先生。そうお聞きすると、門跡寺院もすこし身近に感じられますね。

展覧会のあとは「床みどり」をお楽しみに

客殿に青もみじや紅もみじが映る幻想的なアート「床みどり」や「床もみじ」など四季の美しさで有名な実相院ですが、3月20日(日)までは拝観を停止しています。会場には「床みどり」や「床もみじ」のパネルが展示されているのでお見逃しなく。イメージが膨らんだところで、ぜひ岩倉まで足を運んで実物を観てください。青もみじの見頃は4月25日ごろとのこと。そのころには、襖絵もすべて戻ってきているはずですよ。

実相院門跡展 - パネル展示
パネル展示でも美しさが分かる客殿やお庭

そうそう、展覧会でチェックしておきたい図録ですが、この展覧会は図録ではなく研究書になっています。前半はカラー図版として杉戸絵や襖絵などが掲載されていますが、後半は研究者の方々の論考。実相院だけでなく、門跡寺院とは何かを知ることができる貴重な書物になっています。こちらは書店でも流通しているので、気になる人はお近くの書店でチェックしてみてください。

実相院門跡展 - 『京都 実相院門跡』
『京都 実相院門跡』(思文閣出版)2160円。ゴールドの装幀がかっこいい!

もう少しで前期が終了し、展示替えなので、気になる人は京都文化博物館に急いでくださいね。

実相院門跡展―幽境の名刹―
期間 2月20日(土)~4月17日(日)
※会期中展示替えあり
前期:2016年2月20日(土)~3月21日(月・振休)
後期:2016年3月23日(水)~4月17日(日) ※月曜休、但し祝日の場合は開館、翌日休館
時間 10:00~18:00(金曜~19:30)※入場は閉室の30分前まで
会場 京都文化博物館 4階特別展示室(京都市中京区三条高倉)
料金 一般1100円、大高生700円、中小生400円
電話 075-222-0888
URL http://www.bunpaku.or.jp/exhi_special_post/jissoin/

この記事を書いた人

麦子
お酒と魚(肴)を愛する大阪人。「混ぜるなキケン」のルールのもと、ビール、ワイン、日本酒から2種までならちゃんぽん可。おいしいもの、うつわを求めて週末弾丸トリップも。マイブームは北陸と松山。