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イングリッシュ・ガーデン5

京都文化博物館でふれる、色鮮やかな英国の植物画たち

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京都文化博物館では4月29日(金)から6月26日(日)の期間、世界遺産キュー王立植物園所蔵の貴重な植物画を集めた「イングリッシュ・ガーデン~英国に集う花々」を開催しています。

1759年に設立されたキュー王立植物園は、イギリス王室の私的な庭園としてスタートしました。その歴史は、英国人が作り上げてきた伝統的な庭園スタイルであるイングリッシュ・ガーデンのルーツともいわれ、今回の展示タイトルとして用いられています。植物たちの自然で力強い成長を活かしながら、美しく生活空間へと溶け込ませる庭づくりの様式は近年日本でも人気が高まってきています。

大英帝国の黄金時代に活躍したプラントハンターたち

大航海時代に世界中を旅したプラントハンター(植物採集家)たちは、各地からさまざまな珍しい植物を英国に持ち帰りました。16世紀ロンドン郊外に設立されたキュー王立植物園では、持ち込まれる新しい植物の記録と研究のために植物画が描かれるようになり、芸術性と融合しボタニカル・アートとして発展していきます。マーガレット・ミーンなどの優れた植物画家が相次いであらわれ「ボタニカル・マガジン」をはじめとした学術誌や画集なども数多く発行されました。

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マーガレット・ミーンの描いたダリア。鮮やかな色彩映える。
(c)The Board of Trustees of the Royal Botanic Gardens, Kew
ソーントンが編纂した「フローラの神殿」

詩人の息子として生まれたロバート・ジョン・ソーントンは、進学したケンブリッジ大学で当時斬新だった植物学者リンネの研究を行います。薬用植物に興味を抱いたソーントンは医学の道へと進むことを決め、卒業後は薬用植物学の講師および医師として活躍しました。その後ロンドン植物誌やボタニカル・マガジンなどの植物画集に強くひかれた彼は、私財を投入して「植物図譜フローラの神殿」を編纂します。王室や貴族、富裕層の愛好家などに販売されたこの図鑑は、一流芸術家の起用や豪華な図版・手色彩が高く評価され、後世の植物画に多大な影響を与え続けているといわれています。

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1800年ごろに描かれたヒマワリの水彩画。種や葉脈などが忠実に描写されている点も見逃せない。
(c)The Board of Trustees of the Royal Botanic Gardens, Kew
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植物画に魅せられたデザイナーたちの作品も展示されている。
イングリッシュ・ガーデン5
視聴コーナーに設けられた大型のタペストリー。大きさと色彩の鮮やかさに圧倒される。
世界文化遺産に登録されたキュー王立植物園

1841年に国立機関として一般公開されたキュー王立植物園は、現在は世界最高峰の植物学研究施設となっています。東京ドーム28個分に相当する広大な敷地内には温室や庭園を数多く配置し、年間135万人の観光客が訪れます。世界中に植生する野生植物10%の種子を保管しており、現在も増え続け2020年までには25%に達するといわれています。そうした植物学および造園技術に対する世界的な貢献が認められ、2003年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。今回の展覧会では約22万点のコレクションから150点の銘品を厳選し、植物に対する人間の探究心やエキゾチックな異世界に魅せられた人々の情熱の軌跡をたどることができます。

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キュー王立植物園のパーム・ハウス(温室)。特徴的な外観から植物園のシンボル的な存在になっている。
(c)The Board of Trustees of the Royal Botanic Gardens, Kew
京都文化博物館
住所 京都市中京区三条高倉
電話 075-222-0888
開催期間 2016年4月29日(金)~6月26日(日)
開室時間 10:00~18:00(金曜日は19:30まで)入場はそれぞれ30分前まで
休館日 月曜日
入場料 一般1,300円、大学生・高校生900円、中学生・小学生400円、ペアチケット2,000円

この記事を書いた人

小東けんじ
京都生まれ京都育ちなのだが、南部のはずれ出身のため「京都っぽさ」が希薄で誰にも気付かれない。
首からカメラを下げると新聞記者のおっさんにしか見えないけれど、今日も元気に都大路を東奔西走する。