見どころ

嵯峨嵐山で百人一首の歌碑めぐり

2017-03-09

藤原定家が百人の歌人の名歌を集め、屏風に仕立てたのが、一般的に知られる百人一首の始まり。百人一首が生まれた嵯峨嵐山一帯には、歌を刻んだ石が置かれています。歌碑をめぐり、嵯峨嵐山をそぞろ歩いてみましょう。

亀山公園-古今集・拾遺集・後拾遺集-

天皇や上皇の指示で編まれた歌集を勅撰和歌集と呼び、古今和歌集が最初の勅撰和歌集。百人一首の歌は、古今和歌集から続後撰和歌集までの勅撰集に収録されています。亀山公園には、古今和歌集と拾遺集、後拾遺集から集められた計49首の歌碑があります。優美で華やかな初期の勅撰集を味わいましょう。

 

歌碑 「ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは」
競技カルタをテーマにした人気漫画でお馴染みの、在原業平の歌。落語の演目でご存じの人も多いだろう。紅葉の鮮やかな赤が目に浮かぶ歌だ。
「ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは」

 

 

歌碑 「小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば 今ひとたびの みゆき待たなむ」
二尊院や常寂光寺の裏手にある小倉山を題材にした、貞信公の歌。貞信公は、菅原道真を失脚させた藤原時平の弟・忠平のこと。温和な性格で、歌風も優しく雅であるとされる。
「小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば 今ひとたびの みゆき待たなむ」

 

 

奥野々宮-後撰集-、野々宮-新勅撰集-

野宮神社のそば、竹林に囲まれたエリアに、二番目の勅撰集である後撰集7首の歌碑が建ちます。また、竹林の小径沿いには、新勅撰集4首の歌碑。さらさらと鳴る竹の葉擦れに包まれ、心静かに歌を味わいましょう。頬を撫でるかすかな風でさえ、雅に思えてくるのが不思議です。

 

歌碑 「秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ」
百人一首の一首目、天智天皇の歌碑。平安期の天皇の系譜は天智天皇から連なるため、天皇の御製として天智天皇の歌を第1に選ぶという、後撰集以来の伝統を踏まえている。誰もが知っているであろう有名な歌だが、実は天智天皇の真作ではないという説が有力。
「秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ」

 

 

歌碑 「来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くやもしほの 身もこがれつつ」
さまざまな書家が歌碑の書を担当しているが、藤原定家の歌碑は冷泉家当主の為人氏が記している。冷泉家は定家の孫である為相から始まる歌道の家。当主の筆は代々継承された定家様(ていかよう)で、それを踏まえて歌碑を見ると感慨深いものがある。
「来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くやもしほの 身もこがれつつ」

 

 

長神の杜-詞花集、新古今集-

常寂光寺と二尊院の間に、長神の杜と名付けられた公園があります。ひっそりとして目立たないため観光客は通り過ぎてしまいますが、実は四季折々の自然が美しい穴場スポット。この公園の風景に溶け込むように、詞花集と新古今集の計19首の歌碑が配されています。

 

歌碑 「めぐり逢ひて 見しやそれとも 分かぬまに 雲がくれにし 夜半の月かな」 「秋風に たなびく雲の たえ間より もれ出づる月の かげのさやけさ」
新古今集より、紫式部と左京大夫顕輔の歌碑。紫式部は出会ってすぐに帰ってしまった友人を雲に隠れた月になぞらえ、顕輔は雲の切れ間から顔を出す月の輝きの澄み切った様を歌った。
「めぐり逢ひて 見しやそれとも 分かぬまに 雲がくれにし 夜半の月かな」
「秋風に たなびく雲の たえ間より もれ出づる月の かげのさやけさ」

 

 

嵐山東-金葉集、千載集、続後撰集

中之島公園よりさらに下流にある、運動場も備えた嵐山東公園には、金葉集と千載集、続後撰集の歌碑が。訪れる人が少なく静かで、桂川のせせらぎを聞きながらくつろげます。この公園へ至る道は八幡や木津までつながるサイクリングロードでもあり、桜並木も楽しめる穴場スポット。舞い散る桜を眺めて、王朝歌人の気分で散策してみませんか。

 

歌碑 「世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる」
藤原俊成の歌碑は、子孫である冷泉貴美子氏の書。定家の父で、優れた歌人として名高く、数々の歌合わせの判者も務めた。平家物語の忠度都落のくだりで知る人もいるだろう。
「世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる」

 

 

歌碑 「百敷や ふるき軒端の しのぶにも なほあまりある 昔なりけり」
百人一首の百首目、順徳院の歌碑。承久の乱を前に、不穏な雰囲気に包まれた中で詠まれた述懐歌とされる。順徳院は定家に和歌を習い、歌論書『八雲御抄』をまとめ上げた。
「百敷や ふるき軒端の しのぶにも なほあまりある 昔なりけり」
亀山公園
施設名 亀山公園
住所 京都市右京区嵯峨亀ノ尾町
電話番号
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奥野々宮
施設名 奥野々宮
住所 京都市右京区嵯峨天龍寺立石町
電話番号
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野々宮
施設名 野々宮
住所 京都市右京区嵯峨天龍寺立石町
電話番号
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長神の杜
施設名 長神の杜
住所 京都市右京区嵯峨二尊院門前長神町
電話番号
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嵐山東公園
施設名 嵐山東公園
住所 京都市西京区嵐山(桂川右岸河川敷)
電話番号
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この記事を書いた人

にっしー
音楽と文学をこよなく愛する関西人。母なる琵琶湖のほとりで生まれ育ち、京都に移り住んで十数年。バス停で困っている修学旅行生に道案内をするのが趣味。