古くから安産の寺として信仰されてきた大蓮寺は、蓮の寺としても知られています。暑い夏の日に花開く涼しげで清らかな蓮を愛でに、大蓮寺を訪れてみましょう。
蓮の花咲く安産の寺
大蓮寺は慶長5年(1600)創建の、浄土宗の寺院。深誉上人(しんよしょうにん)が伏見の町で、荒れたお堂の中で輝く阿弥陀如来像を見つけました。この放置されていた阿弥陀如来像を安置するために建立した寺院が大蓮寺です。慶安2年(1650)に後光明天皇が安産祈願の勅命を下し、皇女が無事に産まれたことから、安産の寺として信仰を集めるようになりました。本堂前には蓮の鉢が並べられ、約40種の蓮が6月下旬から8月中旬にかけて花を咲かせます。
数奇な伝説を持つ阿弥陀如来
「安産阿弥陀如来」と呼ばれる本尊の阿弥陀如来は、平安初期の僧・慈覚大師(じかくたいし)の作と伝えられています。「女人の厄難(お産の苦しみ)を救いたい」と阿弥陀如来が夢の中で告げたことから、慈覚大師は女人禁制の比叡山を下り、阿弥陀像を真如堂に安置したそう。その後、応仁の乱で真如堂は荒廃し、阿弥陀像も行方不明に。元禄年間に復興した真如堂が阿弥陀像を探したところ、大蓮寺に安置されていることが分かりました。大蓮寺は幕府から像を返還するように命じられましたが、21日間念仏を唱えたところ、満願の朝に阿弥陀像が二つに分かれ、大蓮寺と真如堂で一体ずつ安置することになったそうです。
走り坊さんの寺
明治から大正初期にかけて、交通が発達していなかった時代に、京都中を走って阿弥陀如来のお札を届けて回った大蓮寺のお坊さんがいました。1日に走った距離は15里(約59km)にも及んだそうで、走り坊さんの呼び名で親しまれていたそうです。私財は全て貧しい人々に分け与えていたため、今一休とも呼ばれ、葬儀の折には弔問の行列が途切れることがなかったそう。大蓮寺では、走り坊さんを描いた御朱印帳やお守りが授与されています。いつまでも元気に歩きたい人や、マラソン愛好家におすすめです。