山科の西野山麓に建つ小さな洋館。1976年創業の「Café et Restaurant 再會」は、まるでヨーロッパ郊外の邸宅に招かれたような、贅沢であたたかい雰囲気を味わえるお店です。天気のいい休日に車を走らせて、あるいはのんびり散策をかねて訪れてみませんか。
まるで絵本の世界! 初めてなのに懐かしい場所
京都の街なかから山ひとつ越えた山科盆地は、昭和の高度成長期にベッドタウンとして開発された地域です。1967年に国道1号線(五条バイパス)が開通すると、翌年には清水焼団地が完成し、陶芸関係者たちが移り住みました。その一帯を貫通する新大石道を南へ行くと、道沿いに田畑やお寺が点在するのどかな住宅地のなかに、ひときわ目を引く一軒家の洋館があらわれます。地元のお洒落な人たちに40年以上も愛されてきたカフェ&レストラン「再會」です。
印象的なオレンジ色の屋根を持つ小さな洋館。その空間と現実を隔てるかのように、緑豊かな前庭が配され、四季折々の花や実のなる植物が植えられています。春にはバラの花が咲くアーチや石畳のアプローチ、井戸のオブジェなど、西洋庭園の趣を散りばめたガーデン。こどもの頃に見た絵本や70年代少女漫画の世界に迷い込んだような、不思議な懐かしさに引き寄せられます。
ガーデンを眺めながら、時を忘れて
扉を開けて店内に入ると、外観のイメージを裏切らないノスタルジックで優雅な空間が迎えてくれます。インテリアは西洋アンティーク調で統一され、大きな窓から射し込む自然光が室内をやわらかく包んでいます。季節によって表情を変えるガーデンを窓越しに眺めながら、静かにお茶を愉しみ、大切な誰かと時を忘れて語らう……そんな贅沢な休日が叶います。
自家製タルトは季節のフルーツがふんだんに
つい長居したくなる心地いい空間で味わえるのは、手作りにこだわったメニューの数々。シフォンケーキやタルト、プリンなどのスウィーツはどれも食べごたえたっぷりなサイズです。素材を生かしたおいしさで、甘さは控えめ。旬の果実がふんだんに盛られたタルトのボリュームは感動ものです。季節ごとに替わるフルーツを楽しみに、きっと再訪したくなるはず。
フードメニューでは、ガーデンで炭と薪を使って焼き上げた数量限定のローストビーフが自慢。ほかにも40年近く改良を重ねたビーフカレーや、ビタミンEが豊富なブランド豚「茶美豚(チャーミートン)」のカツなど、肉系洋食が充実しています。
「何十年も前、ここに通ってたのよ」。そんな会話も聞こえてくる
昭和の喫茶店の面影を残しながら、今も新鮮な感動とくつろぎに満ちたカフェ「再會」。訪れる人たちは、創業当初からの常連とおぼしきシニア世代の夫婦や女性グループから、その子・孫世代のママ友グループ、こども連れの家族、ひとりカフェ女子、新聞を読みふける男性、商談する人たちまでさまざま。この懐の深さにも40年余の歴史を感じます。
きっとまた来よう。「再會」を誓って
開店以来、年中無休というのも驚き。思い立った時、ふらりと立ち寄れます。公共交通手段は京阪バスのみ(地下鉄なら椥辻駅から徒歩約20分)ですが、駐車場は広く(約20台)、夜10時まで営業しているので、仕事終わりのドライブデートにもおすすめ。周辺には桜の名所の大石神社や女性の商売繁盛祈願で知られる折上稲荷神社があり、秋には清水焼団地の陶器祭りも開催されます。次回はそんなイベントや周辺散策をかねて訪れてみては。