三千院や寂光院で知られる洛北の名所、大原。この地で人気の古民家カフェに隠れた逸品「中山ドレッシング」がある。野菜ソムリエの資格を持つオーナーシェフ特製のそれは、きっとあなたを野菜のおいしさに目覚めさせるだろう。
料理人を虜にする大原の野菜
京都の中心地からバスで約1時間の山里・大原は、東に比叡山、西は大原三山などに囲まれた盆地。比叡山系の湧き水が豊富で、ミネラルを多く含んだ清水は野菜や米を力強く、おいしく育てる。盆地ならではの冷涼・湿潤な気候によって発生する霧は、野菜を育てる土に大切な水分を与えてくれ、また、厳しい昼夜の寒暖差は野菜の糖分やビタミンを増やし、甘くて栄養価の高い野菜を育てる。
大原の野菜は、京都の町なかから名店の料理人たちがこぞって仕入れに足を運ぶほどの魅力を持つ。「中山ドレッシング」の生みの親、中山寿士さんも大原の野菜に魅せられた料理人のひとりで、自身が経営する「大原リバーサイドカフェ来隣(きりん)」では、地元農家で丹精込めて栽培された新鮮な野菜をさまざまなメニューで提供している。同店で好評のドレッシングも、食感を残した野菜をたっぷり使用。そのおいしさに「一度食べたら忘れられない」と、自宅用に買い求めるファンも多い。
生きた野菜を味わってほしい
「収穫された野菜は土から離れても生きています。たとえば白菜は包丁で半分に切って保存してもなお、芯部に養分を集めて成長し、子孫を増やそうとする。肉や魚とは違い、野菜は生きた状態で味わえる食材だと気づきました」。修業時代に野菜のたくましい生命力を目の当たりにした中山さんは、その魅力を多くの人に広めたいという思いが募り野菜ソムリエの資格を取得。カフェ開業への原動力になったという。
野菜がおいしい産地に店を出し、採れたてを提供したい──。悩んだ末に選んだのは豊かな自然が残る大原の里。この地で念願を叶えた中山さんは、1年あまり自ら農業を体験し、野菜作りや生産者の苦労を肌で学んだ。
「プロの農家さんへの敬意は常に忘れません。水の量ひとつ、作るエリア、作り手によっても、野菜は食感や味が変わる。それぞれにふさわしい調理法を選ぶことも、産地で調理をする醍醐味です。市場には出回らない野菜の花を料理に添えたり、山里のなにげないおもてなしにお客さまが感動してくださるのもうれしいですね」
自然な甘みでヘルシーに仕上げる
「サラダをおいしく食べるにはオイルは欠かせないが、塩や砂糖はできるだけ減らしたい。試行錯誤を繰り返し、たっぷりの玉葱と人参を飴色になるまでじっくり炒め、野菜の風味と甘さを引き出すことで調味料を極力控えました」。“おいしくてヘルシー”を追求してできたのが、「中山ドレッシング 玉葱・人参」だ。
もう一つのドレッシングにはセロリを使用。中山さんが長年温めていたレシピを改良して完成させたものだ。野菜はすべて生にこだわり、カリウムやビタミン豊富なセロリは、より栄養価の高い葉の部分まで使われている。こちらはりんごの甘さで砂糖を減量し、セロリ独特のクセも気にならない。白ワインビネガー、白バルサミコ酢がセロリの爽やかさを引き立て、フレッシュな味わいに仕上がっている。食感が楽しめる、まさに食べるドレッシング。
市販の食べるドレッシングは液体(オイルなど)主体のものが多いのに対し、中山ドレッシングは野菜が約8割。瓶にスプーンを入れて、すくい上げたときの野菜の濃度は感動すら覚えるほどに具だくさんだ。
野菜はもちろん、肉や魚もおいしく
「普段は野菜を食べない子どもが、このドレッシングで野菜好きになったとうれしい声をよくいただくんです」と微笑む中山さん。子どもを意識したわけではないが、市販品より酸っぱさを抑えて、甘さを引き立てたことがよかったのではと分析する。酢の量だけでなく、酸味のまろやかな米酢、フルーティな味わいの白ワインビネガーなども一役買っている。
[中山シェフが提案する四季をイメージした4種のサラダ]
「玉葱・人参」ドレッシングは、「キャベツの千切りにかけるだけでも充分食べ応えがあります」とのこと。醤油ベースなので冷奴や豚しゃぶなどの和惣菜にも合い、コチュジャンを入れると韓国風に。わさびも合うほか、柑橘類などのフルーツを足してもおいしいそう。ちょい足しアレンジがいろいろできるので、好みの味を探求するのも楽しい。
「林檎・セロリ」はトマトにかけるだけで、おしゃれなイタリアンサラダに。おすすめはカルパッチョで「刺身にかけるだけで、レストランのような一品が簡単にできますよ」と中山さん。魚ならムニエルにもよく合い、万能ソースとしても活躍してくれる。いずれも未開封で3ヶ月保存がきくので、野菜不足が気になる人は店頭あるいは取り寄せて常備してみては。