胴体がくびれたひょうたん型のシルエットが特徴的な、京都の伝統野菜の一つである鹿ヶ谷かぼちゃ。7月25日に鹿ヶ谷の安楽寺で、中風除けを祈願する鹿ヶ谷カボチャ供養が行われました。
悲しい物語の伝わる寺
安楽寺は、鎌倉時代の初めに、法然上人と弟子の住漣上人(じゅうれんしょうにん)、安楽上人が結んだ鹿ヶ谷草庵に起源を持ちます。住漣上人と安楽上人が完成させた美しい声明に感銘を受けた参拝者の中に、後鳥羽上皇に仕えていた松虫、鈴虫という女官がいました。この二人が出家を望み、両上人が剃髪・出家させたところ、後鳥羽上皇は激怒。これを口実に専修念仏を弾圧し、両上人は斬首され、法然上人は流罪となりました。両上人の死後、鹿ヶ谷草庵は荒廃しましたが、流罪地から戻った法然上人が両上人の菩提を弔うために草庵を復興し、住漣山安楽寺と名付けました。
220年以上続く夏の伝統行事
鹿ヶ谷かぼちゃは、1790年ごろに京都の農夫が青森から持ち帰ったかぼちゃの種を鹿ヶ谷に植えたところ、突然変異でひょうたん型になったと言われています。その後、安楽寺の真空益随(しんくうえきずい)上人が、阿弥陀如来から「夏の土用ごろに鹿ヶ谷のかぼちゃを振舞えば中風にならない」とお告げを受けたことから、鹿ヶ谷カボチャ供養が始まったそうです。220年以上続く鹿ヶ谷カボチャ供養は、夏の伝統行事として京都の人々に親しまれています。
中風除けの鹿ヶ谷かぼちゃをいただく
中風とは半身不随や手足の麻痺の症状のことで、いわゆる脳卒中で起きる後遺症。中風になりたくないという思いは昔も今も変わらず、「中風まじない鹿ヶ谷カボチャ供養」には多くの人が訪れます。苔や木々の緑が美しい庭園を眺めながら、あっさり味に炊かれた鹿ヶ谷かぼちゃをいただき、中風除けを祈願しましょう。