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安楽寺 - 鹿ヶ谷かぼちゃ1

中風除けに鹿ヶ谷かぼちゃを食す

胴体がくびれたひょうたん型のシルエットが特徴的な、京都の伝統野菜の一つである鹿ヶ谷かぼちゃ。7月25日に鹿ヶ谷の安楽寺で、中風除けを祈願する鹿ヶ谷カボチャ供養が行われました。

悲しい物語の伝わる寺

安楽寺は、鎌倉時代の初めに、法然上人と弟子の住漣上人(じゅうれんしょうにん)、安楽上人が結んだ鹿ヶ谷草庵に起源を持ちます。住漣上人と安楽上人が完成させた美しい声明に感銘を受けた参拝者の中に、後鳥羽上皇に仕えていた松虫、鈴虫という女官がいました。この二人が出家を望み、両上人が剃髪・出家させたところ、後鳥羽上皇は激怒。これを口実に専修念仏を弾圧し、両上人は斬首され、法然上人は流罪となりました。両上人の死後、鹿ヶ谷草庵は荒廃しましたが、流罪地から戻った法然上人が両上人の菩提を弔うために草庵を復興し、住漣山安楽寺と名付けました。

安楽寺1
哲学の道の一すじ山際の、隠れ道と呼ばれる道に面した安楽寺。通常は非公開だが、毎月2日の地蔵縁日、春と秋の週末、鹿ヶ谷カボチャ供養当日に一般公開されている。
安楽寺2
上皇の寵愛を受ける一方で、虚飾に満ちた御所での生活に苦悩し、出家を選んだ松虫と鈴虫。念仏三昧の余生を送ったという二人の供養塔が境内にある。
安楽寺 - 御朱印
7月25日は御朱印に「南瓜供養」と書き添えられる。
商品名:「御朱印」300円

220年以上続く夏の伝統行事

鹿ヶ谷かぼちゃは、1790年ごろに京都の農夫が青森から持ち帰ったかぼちゃの種を鹿ヶ谷に植えたところ、突然変異でひょうたん型になったと言われています。その後、安楽寺の真空益随(しんくうえきずい)上人が、阿弥陀如来から「夏の土用ごろに鹿ヶ谷のかぼちゃを振舞えば中風にならない」とお告げを受けたことから、鹿ヶ谷カボチャ供養が始まったそうです。220年以上続く鹿ヶ谷カボチャ供養は、夏の伝統行事として京都の人々に親しまれています。

安楽寺3
本堂では、寺の縁起や寺宝の解説などが行われる。
安楽寺4
本尊の阿弥陀如来像に鹿ヶ谷かぼちゃが供えられる。
安楽寺5
皮膚病や腫瘍、病気平癒のご利益で信仰を集める「くさの地蔵菩薩」のお堂前に、鹿ヶ谷かぼちゃのかわいらしい像が鎮座している。

中風除けの鹿ヶ谷かぼちゃをいただく

中風とは半身不随や手足の麻痺の症状のことで、いわゆる脳卒中で起きる後遺症。中風になりたくないという思いは昔も今も変わらず、「中風まじない鹿ヶ谷カボチャ供養」には多くの人が訪れます。苔や木々の緑が美しい庭園を眺めながら、あっさり味に炊かれた鹿ヶ谷かぼちゃをいただき、中風除けを祈願しましょう。

安楽寺 - 鹿ヶ谷かぼちゃ1
書院から庭を眺めながら、鹿ヶ谷かぼちゃをいただく。ほんのり甘く、さっぱりした味わい。持ち帰り用の鹿ヶ谷かぼちゃ(500円)もある。
安楽寺 - 鹿ヶ谷かぼちゃ2
安楽寺の門前では、鹿ヶ谷かぼちゃをはじめ、賀茂なすや万願寺唐辛子などの京野菜を販売。風物詩になっている。
安楽寺 - 鹿ヶ谷かぼちゃ3
書院と本堂の間の庭をはじめ、境内の随所に鹿ヶ谷かぼちゃが置かれている。
安楽寺 - お守り
鹿ヶ谷カボチャ供養では、拝観受付時に阿弥陀如来の護符がいただける。また、祈祷済みの鹿ヶ谷カボチャの種が入った、中風除けのお守りの授与も行われる。
商品名:「鹿ヶ谷カボチャ供養お守り」1000円

基本情報

  • 寺社名
    安楽寺
    住所
    京都市左京区鹿ヶ谷御所ノ段町21
    電話番号
    075-771-5360
    URL
    http://anrakuji-kyoto.com/

この記事を書いた人

にっしー
音楽と文学をこよなく愛する関西人。母なる琵琶湖のほとりで生まれ育ち、京都に移り住んで十数年。バス停で困っている修学旅行生に道案内をするのが趣味。