京都府の南部、奈良との府県境付近に広がる山里・当尾(とうの)の里。当尾の里は、石仏の里として知られています。行き交う人々を穏やかに見守り続ける石仏たちに出会う旅に出発です。
仏教の里・当尾
当尾の里は古くから南都仏教の影響を受け、聖地とされてきました。世俗の喧騒を逃れようと、僧侶たちがこの地に草庵を結び隠棲。その草庵がやがて寺院になり、塔頭が建ち並び「塔の尾根」ができて、これが後に「とうの」に呼ばれるようになったと考えられています。奈良時代に聖武天皇の勅願で行基が建立したと伝わる岩船寺や浄瑠璃寺が、今も歴史を刻み続けています。
石仏を訪ね歩く~岩船寺から浄瑠璃寺へ
当尾の里は、かつて修行場として栄え、磨崖仏が数多く彫られました。道しるべとしての石仏が今も多く残り、往来を優しく見守り続けています。当尾の里の石仏は広範囲に分布していて、すべてを巡ると一日がかり。手軽に巡るなら、所要時間約50分の岩船寺から浄瑠璃寺へ到るコースがおすすめ。辻ごとに立てられた道標に従いながら、石仏を訪ね歩きましょう。
穏やかにほほえむ仏様
当尾の里の石仏の多くは、鎌倉時代に彫られたもの。現存するもので最も古いのは藪の中三尊磨崖仏で、弘長2年(1262)の作との記録があります。永仁7年(1299)作のわらい仏をはじめ、どの石仏の表情も優しく穏やか。手を合わせ、心静かにお参りしましょう。代表的な石仏には、それぞれ解説が記された案内板が立てられているので、歴史やいわれについて知ることもできます。
石仏の里を楽しむ
当尾の里を歩くと時折出会う、地場の野菜や漬け物を売る露店。商品を横に渡した木に吊り下げて売る珍しいスタイルで、吊り店と呼ばれます。この吊り店を覗くのも、散策の楽しみの一つ。石仏と共に旅人を見守り続けたあたご灯籠や丁石など、当尾の里には見所がたくさん。石仏の里に広がる山村の風景を楽しみましょう。