梅雨入りが宣言され、睡蓮が見頃を迎える季節になりました。山科区の勧修寺では、池の水面を彩る睡蓮と花菖蒲が咲き、梅雨時ならではのしっとりした風情で参拝者の目を楽しませています。
醍醐天皇の勅願寺
勧修寺の創建は昌泰3年(900)。醍醐天皇が、生母である藤原胤子の菩提を弔うために建立し、天皇の等身大の千手観音像を安置したのがはじまりです。法親王が入寺する門跡寺院として栄えましたが、文明2年(1470)に、応仁の乱の兵火で焼失。その後、江戸時代に徳川氏と皇室の援助を受けて復興しました。
徳川光圀寄進の雪見灯籠
勧修寺の見所は、何といっても庭園です。応仁の乱で荒廃したものの、貞享年間(1684~88)に、古図を基に平安時代の姿を復元。早春の梅に始まり、桜、藤、杜若(かきつばた)、花菖蒲、睡蓮、紫陽花、蓮、紅葉…と、季節の花や草木に彩られます。書院横の、「勧修寺型灯籠」とも呼ばれる雪見灯籠は、徳川光圀の寄進。この灯籠を取り囲むように枝を這わすハイビャクシンも見事です。
花々が水辺を彩る氷室池
勧修寺の庭園は、船で池をめぐりながら庭を愛でる池泉舟遊式。これは平安時代の典型的な庭園様式です。氷室池を中心に、周囲の山々を借景として、雄大な風景を構築しています。名神高速道路が寺のすぐ側で開通した時には景観が損なわれましたが、寺や道路公団によって竹や椿が植えられ、損なわれた借景を修復したそう。幾度もの危機に見舞われながらも、先人たちの努力で復興したからこそ、平安時代の雅趣を今に伝える庭園を楽しむことができるのです。