何もかも燃やし尽くしてしまう火災は、古くから人々の悩みの種となってきました。乾燥して火災の起きやすい冬に訪れたい、あまり知られていないながらもご利益抜群といわれる火難除けの社寺を紹介します。
応仁の乱で焼け残った千本釈迦堂
おかめさんの伝説で知られる西陣の千本釈迦堂(大報恩寺)は、応仁の乱や文明の乱で一帯が灰塵(かいじん)に帰した中、奇跡的に焼け残りました。このことから、火難除けの信仰を集めています。境内社の稲荷社は火防稲荷とも呼ばれ、火除けのご利益は京都一という説も。昭和26年(1951)から行われた本堂解体修理時に、本堂下で無数の狐の巣穴が発見され、神様のお使いの狐が火災から守ってくれていたのではという逸話もあるそうです。
お不動様の力で火難から身を守る
東福寺塔頭の同聚院は、藤原道長が建立した五大堂の跡地に建つ寺院。五大堂が焼失した時に、唯一焼け残った不動明王を安置しています。この不動明王は「じゅうまん不動さん」と呼ばれ、災厄除け、特に火難除けのご利益が抜群といわれています。2月2日に授与される屋守護(やさご)のお札を家の玄関に貼れば、火災から逃れられるとして信仰を集めてきました。
繁華街に佇む火除けの天神様
四条寺町を南へ下がってすぐの左手、建物横の細い参道の奥に、火除けのご利益で知られる天神様が鎮座しています。その名もずばり火除天満宮は、天正7年(1579)創建。後に織田信長親子を弔うために建立された大雲院の鎮守社となり、現在地へは慶長2年(1597)に遷座しました。蛤御門の変の兵火で広範囲の大火災が起こった時に、火除天満宮の一帯は類焼を免れた事から、火除けの信仰をますます集めたとされています。