矢田寺は地蔵菩薩を本尊とし、地元では「矢田地蔵」と呼ばれ、親しまれています。にぎやかな寺町商店街にあり、まるで道行く人々を見守ってくれているようです。
地獄で人々を救う地蔵菩薩
本尊の地蔵菩薩は、地獄で亡者を救うとされ、「代受苦地蔵」とも呼ばれています。
開山の満慶が地獄に行ってみた際、炎に包まれた鉄釜の中にいる地蔵を見て感動。その姿を現世で仏像とし安置したと伝わっています。
満慶が地獄へ行った際の様子が描かれた「矢田地蔵縁起」は重要文化財です(矢田寺所蔵)。
この満慶と地蔵のエピソードには、平安時代の公卿・文人である小野篁が関わっています。小野篁は、井戸を介してあの世とこの世を行き来し、昼間は朝廷で、夜間はあの世で閻魔大王の補佐として働いていたという伝説の持ち主。その小野篁の師が、満慶(満米上人)だったのです。
小野篁は、人間を裁くことに悩んでいた閻魔大王に満米上人を紹介します。満米上人の話を聞き、心が晴れ「何かお礼がしたい」という閻魔大王に、「地獄の様子を見てみたい」と満米上人が答えたことがきっかけとなりました。
矢田寺とともにある京都人の歳時
京都ではお盆になると、ご先祖様が迷うことなく家族のもとに帰って来られるよう「迎え鐘」をつきます。これに対して矢田寺は、ご先祖様が無事にあの世に帰れるようにと8月16日につく「送り鐘」で有名です。
また、12月23日の「かぼちゃ供養」も、多くの人が楽しみにしている行事。やわらかくて美味しい“かぼちゃのたいたん(煮物)”をお目当てに、行列ができるほどです。冬至にかぼちゃを食べると、厄を落とし、病を防ぐことができるとされています。