仁和寺では御堂の修理に伴い、葺き替えられる新しい瓦に願いを書いて奉納する「瓦奉納」が行われています。4月半ば、その様子と御室桜を観に出かけてみました。
思いを込めた瓦が100年残る
ご本尊(千手観世音菩薩)が安置されている、重要文化財の観音堂は、約370年ぶりの大規模修理中。その新しい屋根瓦に、墨筆で自分の名前や願いを込めたメッセージなどを記すことができます。次に葺き替えが行われるのは、短く見て80年から100年後。その時まで、瓦はずっと観音堂の屋根に置かれます。
瓦の表面には細かな凹凸があるため、墨が染み込みやすく、雨で文字が簡単に消えることはないそうです。観音堂の中のご本尊にメッセージを見ていただくという意味もこめて、書き記した面を下にして置かれます。
春、ひときわ賑わう遅咲きの桜苑
仁和寺と言えば遅咲きの御室桜も有名です。満開を迎える4月中旬は多くの参拝客で賑わいます。五重塔を背景に見る桜苑は、仁和寺を象徴する風景のひとつとなっています。
御室桜は背丈が低いことから「花(鼻)が低い」という意味につながり、通称「お多福桜」とも呼ばれています。また、目線が低いという意味にもつながり、昔から庶民の桜としても親しまれてきました。
開花期間だけ、スノコが敷かれた通路を歩いて桜苑に入ることができます。両脇の桜が目線の高さに迫り、甘く清らかな香りも漂って、まるで桜の中に埋もれているような感覚になります。
御殿の中に観る桜
仁和寺に行くなら「御殿」も拝観したいところ。趣の異なる2つの庭、鍵型の回廊、四季を描いた襖絵などを鑑賞できます。境内の桜が散ったあとも、御殿の桜絵に春の名残を感じられます。