市内各地の桜が、春を待ちわびたかのように一斉に花を咲かせています。伏見区にある墨染寺は、「桜寺」と称されるお寺。こぢんまりとした境内は、2種類の桜に彩られていました。
地名の由来にもなっている「墨染寺」
墨染寺は平安時代の874年に、第56代・清和天皇の勅願を受けた太政大臣・藤原良長が創建した「貞観寺(じょうかんじ)」に始まるのだとか。その後、安土桃山時代には豊臣秀吉が土地を寄進し、大僧都・日秀上人が日蓮宗・墨染桜寺(ぼくせんおうじ)として再興したと言われています。現在の場所へは江戸時代に移され、お寺のある墨染(すみぞめ)という地名の由来にもなっています。
墨染寺は、京阪電車の「墨染駅」から歩いて3分ほどのところにあります。疏水にかかる橋を渡ると、商店が並ぶ一角にある墨染寺が見えてきました。
墨染色に咲く「墨染桜」
山門をくぐると、境内は桜の花に包まれていました。10本ほどの桜の木があり、華やかな染井吉野と少し儚げな「墨染桜」が見られます。この墨染桜にはある言い伝えが。平安時代の太政大臣・藤原基経が亡くなった際に、友人の歌人・上野岑雄(かみつけのみねお)が「深草の野辺の桜し 心あらば 今年ばかりは墨染に咲け」と詠みました。すると「桜の花に心があるのなら、今年ばかりは墨染に咲いてほしい」という思いが通じたのか、墨染色の花が咲いたのだとか。現在は4代目となる桜の木が、小さく薄墨色をした花を咲かせています。
3月31日(土)には桜まつりが行われ、地元の人々による演奏や踊りの披露などがあります。墨染寺の桜はちょうど見頃。伏見の「桜寺」を訪ねてみませんか?