かつて御所の西に湧き水があり、しばしば道が浸水したことから名付けられたという出水通。千本通から七本松通にかけては寺院が建ち並んでいます。これらの寺院に伝わる七不思議をめぐってみましょう。
時雨のごとく水のしたたる松、五色に咲き分ける椿
地元の人々から出水の毘沙門さまと呼び親しまれる、華光寺に伝わる出水の七不思議は二つ。時雨が降るがごとく、枝の先から水滴をしたたらせる時雨松と、五色に咲き分ける椿です。今はいずれも枯死してありませんが、それぞれの子孫が枝葉を伸ばしています。


弦歌の音にひかれて浮かれ猫が踊り出す
光清寺の弁天堂に掲げられた、猫と牡丹、蝶が描かれた絵馬。この絵馬の猫には不思議な言い伝えが。同寺の北には遊里があり、夜になると遊興の音曲が流れ聞こえてきました。この音に誘われて、絵馬から猫が抜け出し女性に化けて踊ったと伝わっています。


ふと見上げればお釈迦様のありがたいお姿
五劫院のくぐり戸の前に立ち、上を見上げてみましょう。木目をよく観察すると、お釈迦様が横になっている姿に見えてきます。寝釈迦と呼ばれるこの不思議な木目、お釈迦様が西、つまり西方浄土に頭を向けていると言われていて、ありがたいお姿だと崇められています。

悲しい泣き声が響いてくる百叩きの門
楠の一枚板で作られた観音寺の門は、桃山城の牢獄の門を移築したものだとか。罪人を解放する時に、この門の前で百回叩いたことから百叩きの門と呼ばれていたそうです。この門からすすり泣く声が聞こえてきたと言われ、七不思議の一つに数えられています。

どちらからくぐるのが正解?二つの小袖門
山門には本来の扉の横に、小さなくぐり戸が一つ取り付けられているのが一般的です。しかし、この極楽寺には、何故か左右にくぐり戸が一つずつ。その理由はいまだ明らかになっていません。大門と両脇に小袖門(くぐり戸)があることから三つ門と呼ばれています。

耳の悩みを解決してくれる日限薬師
京都十二薬師霊場の五番札所、地福寺の薬師如来も七不思議の一つ。石に五色の紐を通して奉納し、日を決めて祈願したところ、耳の病が治ったという不思議な伝説があります。日にちを限って祈願することから日限薬師と呼ばれるようになったそうです。

消えてしまった幽霊
実は出水の七不思議には諸説があり、先に述べた七つのほか、福勝寺の左近桜、玉蔵院の幽霊の掛け軸を七不思議に数えることも。玉蔵院の掛け軸は円山応挙の筆と言われ、描かれた遊女が幽霊に見えたとか。戦後に行方が分からなくなったそうです。幽霊よろしく消えてしまった掛け軸。不思議ですね。
