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鴨川をどり後編

をどりを愉しむ(後編)「鴨川をどり」を知る

鴨川をどり

芸妓さん、舞妓さんが華やかに舞う、京都らしい舞いの公演「をどり」を愉しむ特集。

後編は5月に行なわれる「鴨川をどり」の振付・演出を手がける日本舞踊尾上流四代家元 三代目尾上菊之丞さんに「鴨川をどり」についてお聞きしました。

先斗町歌舞練場
先斗町歌舞練場
鴨川をどり
都をどりと並んで歴史がある鴨川をどりは、先斗町の歌舞練場で行なわれる春の公演。第一部は美しく楽しい舞踊劇、第二部は踊絵巻と称される純舞踊の二部構成で行われます。178回目を迎える今年は、5月1日(金)~24日(日)の24日間開催されます。
はじめて「をどり」観る人にもわかりやすい舞踊劇

尾上菊之丞さん

―― 鴨川をどり第一部の舞踊劇とはどんなをどりですか?

舞踊劇とは踊りがたくさん入ったお芝居です。普通の演劇と違うところは、時間経過がリアルじゃないところでしょうか。舞踊劇ではほんの一瞬、刹那が何分かの踊りになったりします。

―― セリフも入るのですか?

入ります。セリフでお芝居のストーリーを運びながら、登場人物の心情や森羅万象を踊りで表現していきます。

―― 第一部の舞踊劇と第二部の純舞踊のストーリーはつながっているのですか?

第一部・第二部をひとつの題材で通すこともありますが、今年はつながっていません。第一部は明るくて楽しい、みなさんご存じの「西遊記」をやります。猿や河童、豚、三蔵法師がいる…ぐらいを知っていれば十分楽しんでいただけます。

――「西遊記」と「をどり」は意外な組み合わせです。

そうですね。西遊記という中国の物語を日本舞踊で表現することが、ひとつの見どころです。お世辞にもきれいとはいえない孫悟空や沙悟浄を、芸妓さんがどんな風に表現するのか。そのギャップを楽しんでください。

お稽古を重ねて本番へ

鴨川をどり稽古風景

―― 舞妓さん、芸妓さんはかなり前からお稽古されるのですか?

大抵はひと月ちょっとでしょうか。先斗町には毎月4日間お稽古に来ていますが、5月の鴨川をどりの前の4月はほとんどお稽古です。秋の「水明会」の前もお稽古を詰めてやります。踊りだけでなく、三味線、浄瑠璃、お囃子のお稽古があるので、芸妓さんたちはほとんど毎日何かのお稽古をしていると思います。

―― 第二部は舞妓さんも出られるのですか?

第二部は花街の色彩美。舞妓さんも加わって総勢20名ぐらいになります。第一部の西遊記の芝居とはガラリと変わって、花柳界独特の雰囲気が楽しめますよ。今回は五景の構成で、各景にかんざしや櫛など“挿しもの”が関連する「艶姿花挿櫛(しきくらべはなのかんざし)」という演目です。

―― 「五景」とは「五場面」のことですか?

ここでは「景色」のことですね。絵巻物が流れの中で景色が変わっていくように、一枚の絵や写真を切り取って舞踊に仕立てているので「景色」なんですよ。「場面」より「景」の方がしっくりきますよね。西遊記は舞踊劇なので「場」を使います。今回は「五場」での構成です。

―― をどりの世界は表現にも風情がありますね。どんなストーリーなのですか?

12月の顔見世、お正月、6月の夏越の祓、8月の大文字……その時々のドラマや風情を、かんざしや櫛と絡めながらをどりで表現しています。ポイントになる“挿しもの”は女性特有のもの。をどりに限らずそこにはきっと色々なドラマやエピソードがあるはずで、挿しものをテーマに作家の今井豊茂先生に書いていただき、振りを付けました。

舞妓さん

私は芸妓さん、舞妓さんの気持ちが現れる踊りが好きなんですよ。ただ音にのってきれいに踊るのもすばらしいですが、芸妓さんたちがこれまでに積み上げてきた、いろいろな経験が滲み出るものを「艶姿花挿櫛」では表現したいと思っています。

をどりを入口に「芸能」の文化にふれて

―― はじめて「鴨川をどり」を観覧する人に愉しみ方のアドバイスをお願いします。

花街のをどりは舞台の上だけが楽しみじゃありません。堅苦しく考えずに、歌舞練場の建物や花街の雰囲気も楽しんでください。鴨川をどりを入口に先斗町という土地や花柳界というところで遊ぶ文化を知ってほしいです。そこから他の花街のをどりに興味を持ったり、歌舞伎や文楽、落語に興味を持ったり、「芸能」文化の扉を開いてみてください。

―― ありがとうございました。最後にひとつ…ドレスコードはないのですか?

ありませんよ(笑)。一歩足を踏み入れて芸妓さんや花街の文化を肌で感じれば、自然と服装は変わってくるものです。をどりがきっかけで着物文化にふれるのもいいですね。「西遊記だから唐風の柄の着物にしよう」なんて愉しみ方も粋ですよね。

尾上菊之丞さんプロフィール 日本舞踊尾上流四代家元 三代目尾上菊之丞2歳から父に師事し舞踊家として幅広く活動。広いジャンルの芸能者とのコラボレーションに挑戦し多数の作品を創作。振付師としての活動も多く、先斗町「鴨川をどり」、東京新橋の「東をどり」では花柳界の師匠として演出・振付を手がける。
第178回鴨川をどりのパンフレット
第178回鴨川をどりのパンフレット
鴨川をどり公演期間:5月1日(金)~24日(日)
開演時間:12時30分/14時20分/16時10分
観覧料:茶券付特別席 4,800円/特別席4,200円/普通席2,300円/お茶券700円
芸妓さんよりメッセージ

もみ乃さんより~

「今年の見どころは何といっても、第一部『芙蓉西遊記』のユーモア溢れる孫悟空の動きや、ふだんのお稽古にはない仕草、セリフやと思います。先生はもちろん、お姉さん方にもたくさんアドバイスをいただきました。ぜひご覧ください。」

市穂さんより~

「孫悟空役をいただきお稽古はかなり苦戦しておりますが、『芙蓉西遊記』は盛りだくさんのおもしろい内容になってます。みなさんに楽しんでいただけるようがんばります。」


問合わせ:075-221-2025三条大橋西詰 先斗町歌舞練場 チケット情報

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取材協力:Bar雪月花+SALON

(文:麦子/撮影:横山昌史)



この記事を書いた人

麦子
お酒と魚(肴)を愛する大阪人。「混ぜるなキケン」のルールのもと、ビール、ワイン、日本酒から2種までならちゃんぽん可。おいしいもの、うつわを求めて週末弾丸トリップも。マイブームは北陸と松山。