西賀茂・船山のふもとに佇む、獅子の児渡しと呼ばれる庭園が有名な正伝寺。四季折々に美しい枯山水庭園ですが、冬には雪が降り積もり、一幅の水墨画のような景色が楽しめます。
鎌倉時代創建の禅刹
正伝寺は正式には吉祥山正伝護国禅寺という、臨済宗南禅寺派の禅寺。文永5年(1268)に東巌慧安禅師により創建されました。後醍醐天皇から勅願寺の綸旨(りんじ)を受けて栄えますが、応仁の乱で焼失。現在の方丈は承応2年(1653)に、伏見城御成殿の遺構を移築したもので、狩野山楽が描いた襖絵が鑑賞できます。



方丈広縁の血天井
獅子の児渡し庭園を観賞する人々が座る、方丈の広縁。ここで天井を見上げると、無数の血痕が目に飛び込んできます。中には、はっきりと分かる手の指の形も。ぞっとするような雰囲気のこの天井は、伏見城の廊下を貼ったもの。関ヶ原の戦いの前、伏見城が落城したときに、鳥居元忠率いる380余名が割腹したという廊下の床板で、当時の凄惨(せいさん)な光景を思い起こさせる生々しさです。


雪に包まれる正伝寺
四季折々に異なる美しさを見せる正伝寺ですが、冬は何といっても雪景色が格別。サツキの刈り込みも、敷き詰められた白砂も全て、一面雪に覆われた枯山水の庭は、水墨画かモノトーンの写真のよう。まさに幽玄の世界です。たわわに実る赤い南天の実や、ロウバイの黄色い花弁に降り積もる雪の風情も、この時期だけのお楽しみ。積もった雪が融ける前、開門すぐの早い時間帯に訪れるのがおすすめです。


