小川のほとりで和歌を詠み盃を巡らせる「曲水の宴」。かつて宮中で行われていた歌会を再現した風流な行事です。世界遺産・上賀茂神社では、毎年4月の第二日曜日に「賀茂曲水宴」が開催されています。
曲水宴のために造られた渉渓園
北区・上賀茂にあり、上賀茂神社の愛称で親しまれている賀茂別雷神社(かもわけいかづちじんじゃ)。京都三大祭の一つの「葵祭」や、2頭の馬が馬場を駆け抜ける「賀茂競馬(かもくらべうま)」など、古来より続く様々な祭事が行われています。
4月の恒例行事の「賀茂曲水宴」があるのは、境内東側の渉渓園(しょうけいえん)。平安時代末期の様式を模して造られた、曲水の宴のための庭園です。庭園内には小川が流れ、2つの石が合わさったような「願い石」や樹齢約300年という「睦(むつみ)の木」も見られます。
斎王代の最後のお役目
今年(2019年)の賀茂曲水宴は4月14日(日)にあり、午後1時頃には本殿で神事を終えた出演者らが庭園に姿を表しました。中でもひときわ目を引いていたのが、十二単に身を包んだ斎王代。葵祭で選ばれた斎王代は、賀茂曲水宴でその役目を終えます。
まずは斎王代が、今年の歌題「山吹」を発表。続いで童子らが、酒杯をのせた羽觴(うしょう)を歌人の元へ運びました。
様々な春の情景を楽しむ
雅楽や筝曲の調べが響く中、5人の歌人は短冊に和歌をしたためます。しばらくすると、神職が短冊を集めに歌人のもとへ。和歌は冷泉家時雨亭文庫の方々によって披講されました。
曲水宴を終えると、斎王代はかつて斎王が愛でていたという斎王桜の前で記念撮影。和歌から浮かぶ情景と満開の桜が、華やかで雅な春を感じさせていました。