武射神事は、平安時代に宮中で行われていた「射礼の儀」に始まる伝統行事。矢を射て邪気を祓う神事で、毎年1月16日に行われています。今年も大勢の参拝客で賑わった、武射神事の様子をお届けします。
神事の場を清める「蟇目の儀」
午前10時半になると、土舎(つちのや)に神職たちが集まり、お祓いが執り行われました。続いて本殿で武射神事の始まりを報告し、ならの小川にかかる橋殿へ。摂社・末社への遥拝を終えると、御所舎前の射場へと移ります。
射場ではまず、蟇目(ひきめ)の儀が行われます。蟇目の儀は先端に「蟇目鏑(ひきめかぶら)」を付けた矢を放ち、その音で神事を行う場所を祓うというもの。蟇目鏑の中は空洞で、矢を放つと表面に開けられた穴から空気が入ることで音が鳴ります。矢が放たれると、ボォーンという独特な音が境内に響きわたりました。
鬼を退治し災いを消し去る「神官による放射」
続いて射場では、神官による放射が執り行なわれます。朱色の「丹塗矢」を裏に「鬼」と記された的へと放ち、鬼を退治しこの世の災いを消し去るのです。
この丹塗矢は上賀茂神社の始まりと深い関わりがあります。その昔、玉依比売命(たまよりひめのみこと)が賀茂川の川上から流れてきた丹塗矢の力によって懐妊し、上賀茂神社の御祭神・賀茂別雷命(かもわけいかづちのみこと)が誕生したと伝えられています。4人の神官によって、2射ずつ丹塗矢が放たれました。
小笠原流「百手式」の奉納
最後に、小笠原流近畿菱友会によって「百手式」が奉納されました。小笠原流は鎌倉時代から続く弓馬術礼法の流儀で、特に流鏑馬神事などで広く知られています。百手式は地上で矢を射る歩射で、10人の射手が10手(1手は2射)ずつ計100手を射るというもの。「百手式のはじめませう」の声に大将らが「おー」と力強く応え、百手式が始まりました。
射手は5名ずつ、前弓と後弓に分かれます。5名の射手は定められた所作で紐を始末し、片肌を脱いで弓を引く準備を。矢は爽快感ある音を響かせ、見事に的を射抜いていました。