「お西さん」の愛称で親しまれる西本願寺が、寺にちなんだカレーをプロデュース。門前のレストラン「西洋酒樓 六堀(ろくぼり)」との共同で誕生した「執行長(しゅぎょうちょう)カレー」は、お西さんを訪れる新たな楽しみのひとつになりそうです。
「お寺×お洒落なレストラン」の意外性を楽しむ
「執行長カレー」は、西本願寺の境内ではなく、堀川通を隔てた斜め向かいにあるレストラン「西洋酒樓 六堀」で味わえます。門前の縁で、レシピ開発から調理、販売までを同店が任されたのです。街路に面したガラス張りのファサードが印象的な店舗は、内装もナチュラルモダンでスタイリッシュ。そんな空間でお寺とのコラボメニューが楽しめるのも、今どきの京都らしいところです。
カレーの名に冠した「執行長」とは、寺の事務方トップにあたる役職。今回の企画は、昨年(2018年)8月に就任した武田照英(しょうえい)執行長のもとで、若い職員さんたちが考案しました。みんなが好きなカレーを通じて、西本願寺にもっと親しみを持ってほしいという願いをこめて、今年(2019年)1月に販売をスタートしました。
京都と広島の出会いを感じるひと皿
武田執行長は学生時代、全日本チャンピオンを目指すボクサーでした。そこで「健康によく、パンチの効いたカレーを」がコンセプトに。依頼を受けた「六堀」のシェフは、さらにイメージをふくらませ、「執行長の出身地・広島と京都の出会いを感じるカレーにしたい」と考えました。
一番のポイントはトッピング。広島焼きから発想を得たキャベツのマリネと、京都人が「かしわ」と呼ぶ鶏肉のソテーを合わせました。カレーには生姜を効かせ、隠し味には広島名産の牡蠣エキスを使い、仕上げに、こちらも広島名産のレモンを削って散らします。有名ホテルで腕を磨いたシェフならではの、技と贅沢素材がぎゅっと詰まった本格派欧風カレー。話題性だけなく、独創性、味、見た目、すべてにパンチの効いたメニューです。
門前町で出会う、異国情緒の建築
西本願寺では2017年から2022年にかけて、阿弥陀堂、唐門、飛雲閣などの大規模な修復工事が行われています。境内は一時閉鎖の場所もありますが、見どころは門外にもあります。堀川通りに建つ総門から東へのびる正面通、仏具店が立ち並ぶ門前町を歩いてみるのがおすすめです。昔ながらの店並の奥に、赤レンガ洋館風の外観とインド風のドームを持つ、一風変わった建物が見えてきます。重要文化財「本願寺伝道院」です。
1912年、明治最後の年に竣工したこの建物は、もとは真宗信徒のための生命保険会社の社屋でした。その後、何度も使用者を変え、1973年以降、現在も本願寺派の僧侶の道場として活用されています。設計者は東京帝国大学教授・伊東忠太。京都東山の祇園閣や築地本願寺など、多くの文化財の設計を手がけた巨匠です。内部は通常一般公開はされていませんが、異国的な外観や車止めを装飾する不思議な動物たちの彫刻を眺めて楽しめます。