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祇園祭ちまきEC

第2回:粽選びは宵山の楽しみ

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祇園祭といえば、欠かせないのが粽。

浴衣姿の子どもたちが「ちまきどぉどすかー」とかわいい声をそろえる姿は宵山の風物詩の一つです。

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スサノオから授けられた災厄除けの目印

なぜ祇園祭で厄除けの粽が売られるかというと、八坂神社の祭神、スサノオノミコトが旅先で宿に困ったときに、貧しいながらも手厚くもてなしてくれた蘇民将来(ソミンショウライ)に感謝し、その子孫にわたって災厄から守ることを約束し、その目印として茅(ち)を巻いて輪にしたもの身につけるように言ったという故事によります。

この話にあやかり、蘇民将来の子孫である目印として、茅を巻いた「茅巻き」=「粽」を玄関先に飾って厄除けとするようになったのです。

粽に「蘇民将来之子孫也」あるいは「蘇民将来子孫者也」と書かれた紙がついているのは、この家は蘇民将来の子孫の家だと示しているわけです。

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粽に込める町衆の思い

厄除け粽は、長さ 50センチほどのわらを3~4本まとめて折って芯にし、笹の葉でくるみ、 裂いたイグサを巻いてとめます。これを10本束ねて台形に整えたものが基本で、そこに各山鉾ごとに飾りがつけられます。

黒主山の桜の花、保昌山(ほうしょうやま)の梅の花、孟宗山(もうそうやま)の雪を表す白い綿、郭巨山(かっきょやま)の小判などは、各山鉾の伝承に基づいた特徴的な飾りです。

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普通は1つだけ飾るものだが、お店の看板にずらりと並べられた珍しいケース

この粽を作るのも、祭に向けた町内の支度の一つ。粽は京都の北部の農家の方たちが作りますが、そこへ飾りやお守りを取り付け、袋に入れるのは町内の仕事。粽づくりへの参加を呼びかけるチラシを目にすると、いよいよ7月です。

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会所に集まり、町内の人間で手づくりしているところに町衆の心意気が感じられる

粽は宵山の期間、7月14日~16日の間、各山鉾の会所でのみ販売されます(八坂神社の粽は7月1日~31日まで販売)。いずれも厄除けのご利益がありますが、由来に合わせたご利益があるものもあるので、今年はどれにしようか迷うのも楽しみなもの。

くじ取らずで先陣を切る長刀鉾(なぎなたほこ)はもちろん人気ですが、その年の一番を引き当てた運の良さにあやかって、山一番の粽も早くになくなることが多いようです。狙いの物があるなら、宵々々山などできるだけ早く求めるのがベストです。

粽を買うと鉾にのぼらせてくれるところもあり、これも宵山ならではの楽しみ。別途拝観券が必要なところや、女人禁制の鉾もあるので、鉾ごとに確認が必要です。

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勝運御守のついた浄妙山のちまき

ちなみに購入した粽は、疫神が入ってこない目印となるよう、玄関の軒下などに飾ります。翌年の宵山まで1年間飾り、古いものは八坂神社へお納めします。

たまに間違える方がおられますが、ほどいても中からは何も出てきませんのでご注意を。

【代表的な粽のご利益】
(前祭)

  • 占出山:安産
  • 保昌山:縁結び
  • 郭巨山:金運向上

など

(後祭)

  • 八幡山:夜泣き封じ
  • 鯉山:立身出世
  • 浄妙山:勝運向上

など
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