祇園祭は7月1日の「切符(きっぷ)入り」から31日の「疫神社夏越祭(えきじんじゃなごしさい)」まで1カ月間続くお祭りですが、その準備が少しずつ始まっています。
そこで、7月末までの約1カ月半、リアルタイムな鉾町の様子と、祇園祭にまつわるあれこれをお伝えしていきます。
祇園祭のシンボル的存在「長刀鉾稚児」
山鉾にのる唯一の「生き稚児」である長刀鉾の稚児は、7月17日の前祭の巡行の日、四条麩屋町に張られた斎竹(いみだけ)の注連縄を切って祭りの始まりを告げる大事な役割を担います。稚児が発表されるのは、6月上旬頃。祇園祭が近づいてきたなと心がそわそわしはじめるニュースです。
今では町内以外から選ばれることがほとんどですが、その場合は祭りの期間中、町と養子縁組を行なって氏子となり、町内の行事への参加資格を得ます。
そして7月1日、長刀鉾の稚児と禿、長刀鉾町の役員が八坂神社にお参りし、祭りの無事を祈る「お千度の儀」が行なわれます。
稚児にふさわしい身分として正五位少将の位を授けてもらうのが13日の「社参の儀」で、「お位もらい」とも呼ばれます。
稚児はこの日より神の使いとして精進潔斎が必要となり、食事の準備や着付けなど身の回りの世話は父親など男性の役割に。地面に足をつけるのも避けなくてはならないため、必要があるときは強力(ごうりき)の肩に担がれることになります。
神そのものとなる「久世駒形稚児」
祇園祭の「稚児」は、長刀鉾だけではありません。綾傘鉾の稚児も生き稚児ですが、台車の上に大きな傘をのせた古い形式の鉾なので、稚児は歩いて先導します。
初めて稚児を人形にしたのは函谷鉾で、天保13年(1839)のこと。当初乗る予定だった一条実良をモデルとし、嘉多丸(かたまる)と名づけられています。放下鉾のように、稚児舞を披露する人形もいます。
人形とはいえれっきとした稚児なので、それぞれ名前やモデルがあり、表情や体格などもリアル。観覧の際は、見比べてみてください。
そして、祭りにとってもう一つの重要な稚児が、7月17日と24日の夕方、神輿の渡御の先導を務める「久世駒形稚児」。八坂神社の祭神であるスサノオノミコトの荒御魂(あらみたま・荒ぶる心)を祀る、南区久世にある綾戸國中(あやとくなか)神社の稚児です。
綾戸國中神社のご神体である馬の頭をかたどった彫刻(駒形)を胸にかけることから「駒形稚児」と呼ばれ、この駒形は神そのものであるため、駒形をかけたときから久世駒形稚児は神そのものとみなされます。そのため稚児社参の際も唯一、騎馬のまま本殿まで参拝することを許されているのです。
●行事の予定(いずれも八坂神社にて)
- 7月 1日10:00~ 長刀鉾町お千度
- 7月 7日14:30~ 綾傘鉾稚児社参
- 7月13日11:00~ 長刀鉾稚児社参
- 7月13日14:00~ 久世稚児社参