芸舞妓さんの美の秘密……的な話ではなく、
お茶室の天井、建仁寺垣や庭の袖垣、町家の簾(すだれ)などに使われている
「竹」の仲間にとびきりの“べっぴんさん”がいるのをご存じですか?
竹工芸は京都が誇る伝統工芸のひとつ。府内には竹の産地が方々にありますが、工芸品だけでなく銘竹そのものも伝統工芸です。銘竹のひとつである「白竹(しらたけ)」、実はこれがすべすべ美肌のべっぴんさんです。
白竹は、まず伐採した竹を竹藪に数か月間寝かしておき、水分を飛ばすことから始まります。水分が飛んだら工房へ。じっくり火で炙りながら染み出る油分をふき取り天日干しをすれば、緑だった竹が徐々に色白な肌へと変化していきます。白竹ができるまで4か月を要するとのこと。人も竹も美肌は1日にしてならず、なのです。
べっぴんさんの白竹が使われている代表的なものといえば「犬矢来(いぬやらい)」でしょう。町家の軒先にある、あの緩やかなカーブを描いた垣根です。
犬矢来は本来、外壁を汚れや傷から守る役割があり、京都らしい景観の一部。しかし狭い間口で幅をきかせるため、町家のお店さんたちは苦悩しているとか。そこで考えられたのが、空洞部分の有効活用です。
年間50台もの犬矢来を納めている横山竹材店さんのお話では、犬矢来に扉を付けて箒を収納したり、飲食店ならおしぼりの交換場所として業者さんが使用していたり、ガスメーターやエアコンの室外機が隠されていたりするとのこと。花見小路にある犬矢来を注意深く見てみると、たしかに取っ手のついた扉が随所にありました。扉を発見すると、京都の秘密を垣間見た気分になれますね。
犬矢来は10年に一度取り換えられます。そこに傷一つない白竹が選りすぐられて使われているとは、美を追求する京都らしいですね。
取材協力:横山竹材店
http://www.yokotake.co.jp/
(文:麦子)