桂離宮のほど近くに店を構える和菓子の老舗「中村軒」。こちらの茶店コーナーで冬季のみいただけるのが、京都らしさを感じる白味噌のお雑煮です。寒い季節にぴったりの温かで深みある味を求めて、桂まで足を運んでみませんか。
昭和天皇も召し上がった歴史ある味
阪急桂駅から徒歩15分。桂川のほとりに看板を上げているのが中村軒です。名代「麦代餅(むぎてもち)」をはじめ、季節に応じたさまざまな和菓子を手作りし、提供されています。創業は明治16年で、丹波、 丹後路を通る人々に饅頭を販売し始めたのが店の起こりなのだそうです。
中村軒の和菓子は昭和天皇皇后両陛下に献上された歴史を持ち、また、内国勧業博覧会で銀賞を受賞したこともあるという、国のお墨付きのもの。餅屋ならではの弾力ある餅と、おくどさんでじっくり炊き上げたあんこの昔懐かしい味に惹かれて、何度も足を運ぶファンが多いのだとか。近くに位置する桂離宮を訪れた観光客が立ち寄ることもあって、店には常に人が絶えません。併設の茶店も大人気で、特に夏限定で提供されているかき氷は若い世代を中心に評判を呼んでいます。
四季折々の演出が楽しめる店
店に足を踏み入れると、長い歴史を感じさせる落ち着いた佇まい。通りに面した入口付近は販売コーナー。三色だんごやきんつばのような通年の商品以外にも、春は桜餅、秋は栗もちなど季節の多種多様な商品が揃います。
茶店コーナーは、店の奥。席数は全部で60席あり、日本家屋の趣がある座敷の床席だけでなく、海外の方にも使いやすいイス席もあるのがありがたいところです。
他にも、店内では3月に雛人形、5月に大将人形が飾られるなど、四季を反映した演出がなされるのも魅力のひとつ。違う季節を選んで足を運べば、以前とは違った光景を楽しむことができるでしょう。
心身ともに温まる白味噌雑煮
こちらの茶店での冬における主役は、なんと言っても餅。中でも京都ならではの味がいただける白味噌雑煮は、これを食べにわざわざ訪れる客もいるという自慢のメニューです。
大ぶりのお椀に広がるのは、京都有数の味噌店「山利商店」の白味噌を使ったおつゆ。中にはこれまた大きな餅がふたつと、ひと口大の小芋がひとつ。たったそれだけのシンプルな具材が、かえってこの一品の奥深さを感じさせてくれます。
まず白味噌のおつゆを口に含めば、まったりとしてコクのあるまるい味わいが。お好みで別添えのかつお節をふりかければ、よりいっそう風味が深まります。
そしてメインの餅は、噛みごたえと弾力があり、「もちもち」という表現がぴったり。噛むうちにほんのりとした米の甘みが口の中を満たし、じわじわと幸せな気分になっていきます。
最後の一滴を飲み干す頃には、冷えていた身体もすっかりぽかぽかに。寒い時期ならではの心温まる味を満喫したい方は、ぜひ冬が終わる前に中村軒を訪れてみてください。