千年の都・京都の季節を彩るさまざまな和菓子。なかでも「大極殿本舗 六角店 栖園」で提供されている「琥珀流し」は、月ごとに変わる、季節を反映した蜜が魅力です。坪庭を臨む伝統ある町家で、京都の四季をいただいてみませんか。
京都の中心地に暖簾をかかげる京菓子の老舗
大極殿本舗は1885年に創業された京菓子の老舗。いけばな発祥の地・六角堂のほど近くに店を構えており、錦市場からもアクセスしやすい場所に位置しています。名物は100年以上愛されてきたという「春庭良(カステイラ)」。あえてバターやミルクを使わず作られたカステイラは、卵の味が濃く、しっとりした食感。京菓子店ならではのこだわりを感じる上品な味わいです。
店は築140年に及ぶ間口の広い京町家。入口にかかる暖簾は季節に応じて取り替えられ、六角通に四季を伝えます。店内は入口近くが販売、奥が併設の喫茶スペース「栖園」。特に喫茶スペースは京町家の風情を感じる造りになっており、光の差し込む坪庭から柔らかな風が流れます。そのため坪庭に接する窓際の席は大人気。この席がお目当ての際は開店直後に訪れるのがおすすめです。
月ごとに表情を変える和菓子
この素敵なシチュエーションでいただけるのが、大極殿本舗を代表する涼菓「琥珀流し」。「腰抜けの寒天」と呼ばれる、舌で簡単に崩せるほど柔らかな糸寒天に、季節の素材と蜜をかけたシンプルながらも奥が深い一品です。
琥珀流しの最大の特徴は、季節に応じてひと月ごとに蜜の味と素材が変わること。それによって和にも洋にも姿を変え、訪れた客をもてなします。12通りに変わる蜜は味も見た目も実に多種多様。新春を祝う雑煮にヒントを得た1月の「白味噌」に、京都を華やがせる桜をイメージした4月の「桜花」。7月にいただける「ペパーミント」にはサイダーが添えられ、注ぐことでより清涼感をアップさせてくれます。他にも旬を迎えた栗と小豆が嬉しい10月の「くり」など、そのアイデアには目を見張るほど。このバリエーション豊富なラインナップに惚れ込み、すべての味を楽しもうと1年を通じて訪れ、注文する方もずいぶんと多いのだそう。前述の暖簾同様、季節のうつろいを大事にするという店の姿勢が感じられます。
目と舌で感じる四季
取材時の琥珀流しの蜜は11月の「柿」。カットされたフレッシュな富有柿と、ピューレ状になりとろりとした江戸柿、ふたつの組み合わせを楽しめます。秋らしさが感じられるのは蜜の風味だけでなく、オレンジ色に染まった器も同じ。食べるだけでなく、目でも季節を味わうことができる。これこそが琥珀流しの醍醐味です。
みずみずしく浮かぶ寒天を、まずはそのままひと口。ほのかに甘くほろほろと崩れる寒天の乙な味を楽しんでください。さらに蜜と共にひとすくいして口に運べば、舌の上で寒天と蜜が混ざり合って、まるで柿の甘露をいただいているかのよう。ふた切れ添えられた富有柿はシャキシャキとした歯ごたえが心地よく、そのまま食すだけでなくピューレ状の江戸柿と一緒に食べるのもまた一興です。
季節感を反映した蜜とトッピング。そのふたつを橋渡しする寒天の、主張しすぎない絶妙な味わい。和菓子フリークならずとも思わず唸る四季の妙味です。