空港のない都道府県のひとつである京都。飛行機とは縁がないように思われますが、実は空の神様が祀られる神社があります。航空業界からあつい信仰を寄せられる「飛行神社」を訪ねました。
日本ではじめて動力飛行機の飛行に成功した二宮忠八が創建
「世界ではじめて有人動力飛行機の飛行に成功した」といえばライト兄弟が有名ですが、実はその10年以上前に飛行原理を発見していた日本人・二宮忠八がいました。有人飛行機開発をめざすも断念。飛行機事故の多発に胸を痛めたことから、大正4年に自邸内に私財を投じて飛行神社を創建しました。
本殿は3つの社殿からなり、正面は古代の空の神といわれる饒速日命(ニギハヤヒノミコト)を祀る。向かって右側は航空殉難者の霊を祀る祖神社、左側は薬業に関係の深い薬祖神を祀る薬光神社。二宮忠八は大阪製薬株式会社で職工として活躍しながら、飛行機開発の資金を貯めた。
ステンドグラスが美しいギリシャ風拝殿
現在の建物は平成元年に飛行原理発見百年を記念して建て替えられたもので、なんと鳥居は航空機で使用されることの多いジュラルミン製です。拝殿の上のほうへ目を向けると、陽の光をきらきらと反射する美しいステンドグラスがはめ込まれています。トンボやトビウオといった「飛ぶ」生き物がモチーフとなっています。「空は1つ」の思いのもと、「世界各国からお参りしてもらいたい」という願いを込めて洋風に建築されたそうです。
貴重な展示を見て、空の安全に思いをはせる
本殿奥の二宮忠八資料館には、二宮忠八自筆の資料のほか、各方面からの寄贈品が展示されています。また境内では、機体の一部を間近で見ることができます。なかでも航空自衛隊が最初に導入した超音速戦闘機「F104J」のエンジンは迫力満点で、航空ファンは必見です。また、海中から引き揚げられた零式戦闘機エンジンはプロペラが大きく曲がり、戦闘の激しさを物語っています。夏の行楽シーズンを前に飛行神社を訪れて、世界中を日々飛び回る航空機の安全を祈ってみてはいかがでしょうか。