秋の七草のひとつで、古今和歌集や源氏物語にも登場する藤袴(フジバカマ)。絶滅の危機に瀕する藤袴を守る取り組みのひとつ「藤袴アベニューてらまち」が開催されました。
可憐な野の花に愛を託す
藤袴はキク科の多年草。筒状の花弁が袴に見えることから名づけられました。葉や茎を乾燥させると、桜餅の葉と同じクマリンという芳香成分が生じます。平安時代の貴族たちは匂い袋にして、ほのかな香りを楽しんでいました。紀貫之は、忘れられない人への思いを藤袴の香りに託しています。
「やどりせし人の形見か藤袴 忘られがたき香りににほひつつ」 (古今和歌集 紀貫之)
訳)私のところに泊まっていった人の残した形見か、藤袴よ。忘れがたいよい香りが漂っている。
ひと株の花から、人々の思いが広がる
かつて水辺や野原に群生していた藤袴の原種は、河川改修など環境の変化によって絶滅したと思われていました。しかし、1998年に大原野の明治池で、ひと株の藤袴が発見されます。そのひと株から、大原野・深草・水尾など京都の各地で藤袴が育成されました。
10月11日から16日にかけて開催された「第2回 藤袴アベニューてらまち」。地域住民や企業などの「里親」によって育てられた約900鉢の藤袴が、寺町を訪れた人々の目を楽しませました。
旅する蝶に願いを託す
「革堂さん」の愛称で親しまれる行願寺には、日本から台湾や香港にまで「渡る」蝶、アサギマダラの「願い札」がありました。アサギマダラは藤袴の香りを好むといいます。歩いても歩いても、アサギマダラには出会えませんでしたが、さまざまな蝶や蜂が藤袴の周りを飛び交っていました。