比叡山麓に広がる大原は、豊かな自然と古刹が残る里山として人気を集めています。三千院や常寂光院などのあるエリアからさらに北へ進むと、山間にひっそりと佇む古知谷阿弥陀寺が。境内は新緑に包まれ、九輪草が咲き始めていました。
生身の阿弥陀佛「弾誓上人」が開いた如法念佛道場
古知谷阿弥陀寺は1609年に弾誓上人(たんぜいしょうにん)によって開かれた、如法念佛の道場です。弾誓上人は諸国行脚して苦行修練を重ね、生身の阿弥陀佛を拝し得た人物。最後の修行の地としてこの大原古知谷を訪れました。本堂には弾誓上人自ら刻み頭髪を植えた本尊と、阿弥陀如来坐像が安置されています。
また境内には石廟(せきびょう)があり、石廟内には石棺が見られます。弾誓上人は生きながらにして石棺に入り、ミイラ佛となったと伝えられているのです。
新緑の参道を歩いて
阿弥陀寺の入口には、印象的な中国風の楼門が見られます。楼門を抜けると、青々とした新緑に包まれた参道が。阿弥陀寺は紅葉の隠れスポットとしても人気のお寺で、春には芽を出したばかりのカエデの若葉が辺り一面に広がっています。
参道を20分程進むと、一際大きなカエデが見られます。樹齢約800年にもなるカエデの大木は、京都市の天然記念物に指定されているもの。カエデの大木を過ぎると、階段の先に境内が見えてきました。
色とりどりの九輪草を眺める
古知谷阿弥陀寺では、例年5月上旬から中旬にかけて九輪草が見頃を迎えます。九輪草は茎を中心に円状に花がつき、それが数段に重なる特徴的な形状。その姿が仏閣の屋根に見られる「九輪」に似ていることから、九輪草と呼ばれるようになったといわれています。京都府の準絶滅危惧種に指定されている、貴重な花なのです。
阿弥陀寺の庭には、紅紫や白、薄紅など色とりどりの九輪草の花が咲き始めていました。この九輪草は、20年以上かけて少しずつ増やしてきたのだとか。今年もまもなく見頃を迎えそうです。