櫛は古くから髪を整えたり飾ったりするのに使われ、現在でも欠かすことのできない道具の一つです。そんな櫛に感謝するお祭りが、東山の安井金比羅宮で行われます。2017年9月25日の「櫛祭」の様子を紹介します。
「悪縁を切り、良縁を結ぶ」安井金比羅宮
安井金比羅宮は、祇園の花見小路や建仁寺に程近い東大路通沿いにあります。その歴史は古く、天智天皇の時代(668~671年)に藤原鎌足が子孫の繁栄を祈願する一堂を創建し、藤を植え「藤寺」と号したことに始まると伝えられています。
安井金比羅宮には、「悪縁を切り、良縁を結ぶ」ご利益が。主祭神である崇徳天皇が保元の乱で敗れ讃岐へ流罪となり、一切の欲を断ち金刀比羅宮に参籠(おこもり)されたことから、断ち物祈願所として信仰を集めてきました。男女の縁をはじめ、病気や賭事などあらゆる悪縁にご利益があるとされ、全国各地からたくさんの人が参拝しています。
9月の第4月曜日に行われる「櫛まつり」
安井金比羅宮の境内には、「久志塚(櫛塚)」があります。昭和36年に建立され、その年より京都美容文化クラブ主催の「櫛まつり」が行われてきました。
午後1時になると、まず久志塚の前で祭典が執り行われ、使い古した櫛やかんざしが、供養され塚の中に納められます。続いて拝殿では舞踊・黒髪の奉納。美しく結い上げられた先笄(さっこ)に黒紋付き姿の立方が、優雅な舞を披露していました。
伝統の髪型が見られる時代風俗行列
奉納が終わると、拝殿で時代風俗行列の紹介が始まります。時代風俗行列は、古墳時代から現代の舞妓さんまで、時代ごとに伝統の髪型と衣装を再現しています。すべて地髪で結い上げられた伝統の髪型は、まさに芸術品。各時代のモデルが登場するたびにあちこちでシャッター音が響き、ファッションショーさながらの盛り上がりを見せていました。
午後2時頃になると、時代風俗行列が安井金比羅宮を出発します。行列は東大路通を上り、白川南通や花見小路通を通って安井金比羅宮へと戻ります。祇園の街をゆっくりと進む行列には、京都ならではの風情が。なかなか目にする機会のない伝統の髪型と衣装を見ようと、沿道には多くの人が集まっていました。