実りの秋を迎え、田畑には黄金色に輝く稲が見られます。各地の稲刈りも終盤を迎える頃、伏見稲荷大社では稲刈り神事の「抜穂祭」が行われました。
毎年10月25日に行われる「抜穂祭」
伏見稲荷大社は、全国約3万社ある稲荷神社の総本山。朱塗りの鳥居が連なる「千本鳥居」や、稲荷大神の降臨地である稲荷山を巡る「お山巡り」などが人気で、多くの参拝者が訪れています。
伏見稲荷大社に祀られている稲荷大神は農業の神様。そのため伏見稲荷大社では、稲の種をまく播種から収穫までの、農業に関わる様々な神事が行われています。その一つである「抜穂祭」は、五穀豊穣に感謝をして、収穫期を迎えた稲を刈り取る神事です。

稲荷山の麓に広がる神田へ
午前11時になると、本殿で神事が執り行われます。お祓いや祝詞の奏上に続き、神楽女による抜穂舞の奉納がありました。本殿での神事を終えると、神職をはじめ参列者たちは境内北側の神田へ。十石橋を渡り木々に覆われた参道を進むと、神田が見えてきました。
神田の奥にある舞台で、「抜穂の儀」が執り行われます。稲の穂は重みで垂れさがり、まさに収穫時を迎えていました。この稲は6月に行われた「田植祭」で植えられたもの。神田を祓い清めた後、早乙女らに鍬が渡され、いよいよ稲刈りが始まります。



風流な舞が見られる「抜穂の儀」
菅笠を被った早乙女らが、鍬を手に神田へ入っていきます。始まりの合図とともに、手慣れた様子で次々と稲が刈り取られていきました。稲刈りが始まると、舞台では「抜穂舞」が奉納されます。神楽女が稲と鍬を手にし、まるで稲を刈り取るような仕草が印象的。舞の奉納が終わる頃には、たくさんの稲の束が積み上がっていました。
収穫した稲は神領米として、11月の新嘗祭をはじめとする様々な神事で用いられます。また稲藁は11月の火焚き祭で炊かれます。
抜穂の儀が終わると、神職らは本殿へ戻ります。揃って参拝をして、今年の抜穂祭は締めくくられました。


