年が明けると、神社仏閣では新年を祝う様々な行事が執り行われ、多くの参拝者でにぎわいます。世界遺産の下鴨神社で行われる、新春恒例行事の「蹴鞠はじめ」を紹介します。
中国から伝わり、独自の発展を遂げた蹴鞠
賀茂川と高野川が合流する鴨川デルタの北側には、広大な敷地を持つ下鴨神社があり、境内の南には糺の森が広がります。毎年5月には京都三大祭の一つ「葵祭」が行われています。
蹴鞠は1400年ほど前に、中国から伝わりました。平安時代には貴族の間で流行し、宮中で盛んに鞠会が開催されていましたが、明治維新以降にいったん途絶えてしまいます。その後1903年に京都蹴鞠保存会が創立され、皇室とゆかりの深い下鴨神社で復活。毎年1月4日に行われる「蹴鞠はじめ」で奉納されるようになりました。
勝敗を付けない、平和的な遊び
午後1時半になると、本殿で神事が行われます。その後、神官や鞠人たちは舞殿横の鞠場へ。鞠人は烏帽子に鞠水干、鞠袴に鞠靴の鞠装束をまとい、8人が一座となって蹴鞠を奉納します。
蹴鞠は勝敗を争うのではなく、相手が受けやすいように蹴って長く続けるものです。そのため、3回蹴って次へ渡す「一段三足」という蹴り方が用いられます。鞠を受取り、態勢を整え3回蹴ることで、次へ渡す相手が受けやすいように蹴ることができるのです。他にも「腰や膝を曲げない」「足の裏を見せない」など様々な作法があります。
平安情緒を感じる「蹴鞠はじめ」
鞠場には、「アリ」「ヤア」「オウ」という独特の掛け声が響きます。この掛け声は、鞠の精霊の名前に由来するのだとか。平安時代に蹴鞠の名人と言われた藤原成通は、蹴鞠上達のために千日に及ぶ鞠に挑戦しました。そして満願の日の夜、猿の姿をした鞠の精霊「夏安林(アリ)」「春陽花(ヤウ)」「桃園(オウ)」が現れたと伝えられています。
蹴鞠は3回奉納され、1回につき10~15分ほど。鞠が地面に落ちずに長く続くと、客席からは声援が送られ、会場は盛り上がりを見せます。2018年の「蹴鞠はじめ」は、1月4日(木)の午後1時半から。平安貴族の遊びを思わせる風情ある蹴鞠を見に、下鴨神社を訪れてみませんか?