北野天満宮の門前で粟餅を作り続けること、330年以上。「天神さん」の広い境内を散策した後は、粟餅所・澤屋で憩いのひと時を過ごしてみてください。
ここでしか味わえない出来立てを
粟餅所・澤屋へは北野天満宮の一の鳥居を出て1分ほど、粟と書かれた茶の暖簾と「北野名物」と朱で書かれた提灯が目印です。店内は、艶のあるカエデの木が机などに使われており、風格がありつつ、ゆったりと落ち着く空間になっています。
粟餅は作り置きせずに、数百人分ずつ、一日に何度もつくというこだわりよう。それも、出来立ての粟餅を提供するためです。持ち帰りのお客さんには、必ず「その日のうちにお召し上がりください」と一言添えます。
定番メニューの粟餅はこしあん2つときなこが1つの紅梅(450円)、こしあん3つときなこ2つの白梅(600円)。どちらも煎茶がつきます(抹茶はプラス300円)。
夏はみぞれ氷、宇治金時氷、粟餅氷などがあります。
店内に入ってすぐのカウンターにて注目を済ませたら、番号が書かれた札を受け取り、席に座り待ちます。注文カウンターの横にある大きな桶から取り出した粟餅を、エプロン姿の店員さんが手際よく、くるくると丸めて、お皿にのせていきます。その素早さに見惚れていると、あっという間に席に粟餅が到着します。
ふんわり、ぷちぷち、たまらない美味しさの粟餅
継ぎ目なく美しい玉に仕上げられたこしあんの粟餅は、滑らかな舌触り。素朴ながら上品で、ほどよい甘さです。たっぷりときなこがふりかけられた粟餅は、たくさんきなこを付けられるようにとの工夫から細長くつくられています。風味のよいきなこと粟餅の食感の組み合わせもまた絶品です。
出来立ての粟餅はほのかにあたたかく、粟のぷちぷちとした独特の食感。また、粟の混ぜられたお餅は、普通のお餅よりふわりと軽く、喉ごしがよいのが特徴。見た目のボリュームからは想像できないほど軽くいただけてしまいます。
京都の和菓子の歴史を感じる
天神さんへの参拝客に憩いのひとときを提供し続けている澤屋。古くは、正保2年(1645年)に刊行された俳諧に関する書物の「毛吹草(けふきぐさ)」に、また明暦4年(1658年)に刊行された京都で最も古いとされる名所案内「京童(きょうわらべ)」にも、その名が記されています。数百年にもわたって多くの人々に親しまれ、今日まで続いていることを思いながらいただく粟餅は、感慨もまたひとしおです。
持ち帰り用は、5個で600円〜50個で6000円まで。こしあんときなこをいくつずつにするかはお好みで指定することができます。営業は17時までですが、粟餅がなくなり次第終了。澤屋が粟の鏡餅を奉納している毎月25日の北野天満宮の縁日の日や、梅園の公開シーズンなど参拝客が増える日は、特に注意が必要です。