嵯峨野には、美しい自然や情緒のある寺社、そして古典文学の舞台となった場所が数多く残っています。今回は嵯峨野の竹林にひっそりと佇む野宮神社を紹介します。
竹林の小径の風情を楽しむ
まずは竹林の小径を歩いてみましょう。天龍寺の北側から野宮神社を通り、大河内山荘付近まで続いています。すっと伸びた竹が径の両側から覆いかぶさるように空を隠し、晴れた日の木漏れ日や、風に揺れる笹の葉音が何とも心地のよい場所です。雨の日の静寂に包まれた竹林もまた違った風情があります。
源氏物語ゆかりの地である野宮神社
天龍寺北側から西へ竹林の小径を歩いていくと、小柴垣に囲まれた野宮神社が見えてきます。野宮神社はかつて、天皇の代わりに伊勢神宮にお仕えする斎王に選ばれた皇女が伊勢へ向かう前に身を清めた場所で、当時の雰囲気を残していると言われています。
源氏物語の「賢木」の巻には、当時の野宮神社の情景が美しく描写されています。斎王となる娘とともに伊勢へと下る六条御息所との別れを惜しみ、光源氏が野宮神社を訪れる「野宮の別れ」は、源氏物語の中でも特に感動的だと称されている場面です。
黒木鳥居と美しい苔庭を見よう
野宮神社の正面の鳥居は黒木鳥居と言い、樹皮がついたままのくぬき(くぬぎ)を使い、鳥居の形式としては日本最古と言われています。
境内の奥には、一面が苔で覆われた庭があります。洛西随一のじゅうたん苔と言われているのだとか。梅雨の時期の緑が深まった苔や、秋の紅葉とのコントラストなど、季節によって様々な表情を見せてくれます。
古典文学の世界と四季折々の自然の美しさを、野宮神社で味わってみませんか?