五山送り火や鞍馬の火祭と並ぶ京都三大火祭が、清凉寺の「嵯峨お松明式」。お釈迦さまの涅槃会にちなんだ春の恒例行事で、松明を燃やしてその年の農作物の吉凶が占われます。
お釈迦さまを祀る嵯峨野の古刹
清涼寺は、「嵯峨釈迦堂」の愛称で親しまれる浄土宗のお寺です。かつて源氏物語の光源氏のモデルになった源融(みなもとのとおる)の山荘があり、没後に築かれた棲霞寺(せいかじ)が清凉寺の前身といわれています。
その後、奝然(ちょうねん)上人が中国・宋から釈迦如来立像を持ち帰り、「大清凉寺」の建立を計画。遺志を継いだ弟子の盛算(じょうさん)によって、清凉寺が築かれました。
涅槃会に合わせた「お松明式」
「お松明式」が行われるのは、お釈迦さまの入滅した3月15日(旧暦2月15日)。この日は涅槃会の法要に嵯峨大念仏狂言の特別公演もあり、終日参拝者でにぎわいます。
嵯峨大念仏狂言は、鎌倉時代に円覚上人によって始められました。セリフは無く、狂言面を付けて演じられるのが特徴です。3公演に分かれて「橋弁慶」「釈迦如来」「土蜘蛛」が演じられ、鍛錬された動きで観客を魅了していました。
松明と高張り提灯で、農業の先行きを読む
お松明式の主役となるのは、3本の松明。その高さはおよそ7mにもなり、豊作を願って付けられる天狗の顔に見立てた輪が印象的です。それぞれ早稲、中稲、晩稲に見立てられていて、燃え方によってその年の農作物の吉凶が占われます。
また本堂前には13本の高張り提灯が立てられていました。くじによって提灯の高さが決められ、江戸時代にはその高低によって米相場が予測されていたようです。
夜空を照らす圧巻の松明
午後8時頃になると、いよいよお松明式がスタート。まずは護摩壇に火が灯され、提灯行列が護摩壇と松明の周りを練り歩きます。そして竹を使って護摩壇の火を投げ込むと、松明は勢いよく燃え上がりました。
お松明式は、お釈迦さまが荼毘に伏す様子を再現したもの。3本の松明はあっという間に燃え尽き、春を告げるお松明式は2019年も無事に締めくくられました。