春の陽気に誘われて、桜が次々と見頃を迎えています。洛中の名刹である千本釈迦堂の阿亀桜は、今年も美しい花を咲かせて訪れる人々を楽しませています。
千本釈迦堂の名で親しまれる大報恩寺
大報恩寺の歴史は古く、1227年に義空上人によって開創されました。本堂は応仁の乱の戦火を奇跡的に逃れた洛中最古の木造建築物で、国宝に指定されています。また霊宝殿では重要文化財に指定されている、鎌倉時代を代表する仏像彫刻家・快慶の「十大弟子像」や定慶の「六観音菩薩像」などを見ることができます。日本の貴重な歴史や文化を今に伝える、由緒あるお寺なのです。
美しく切ないおかめ物語
境内には大きなおかめ像とおかめ塚があります。おかめ(阿亀)とは本堂建築の際に棟梁だった大工の妻です。大工が重要な柱を短く切り過ぎてしまった時に、おかめが枡組を使うよう助言し、窮地を救いました。しかし自分の助言で本堂が完成したことが知られては夫の恥と思い、上棟式を待たず自害してしまいます。この物語からおかめ信仰の発祥地となり、縁結びや夫婦円満、子授けのご利益があるとされているのです。
気高く咲き誇る阿亀桜
この時期ひときわ目を引くのが本堂の前にある阿亀桜。おかめ物語にちなんでその名が付けられた名物の枝垂れ桜です。木全体をすっぽりと包み込むように地面まで枝が広がり、薄紅色の花を枝いっぱいに咲かせています。見上げると桜がまるでシャワーのように降り注ぎ、傍ではおかめ像が優しく見守っています。繊細で美しい桜を愛でながら、春のひとときを過ごしてみませんか?