妙心寺の塔頭・東林院は、沙羅双樹の寺として知られています。例年見頃を迎える6月には、「沙羅の花を愛でる会」が開かれ、趣のある庭園に咲く沙羅の花を楽しむことができるのです。
宿坊と沙羅双樹の東林院
臨済宗妙心寺派の大本山・妙心寺は、1337年に創建された日本最大の禅寺です。広大な山内には実に46もの塔頭が並び、その一つの東林院は山内の東側に位置しています。室町幕府最後の官僚の細川氏網が建立した「三友院」が東林院の起源とされ、その後、妙心寺の山内に移されて再興されました。現在は春・夏・秋の年3回特別公開されているほか、宿坊として利用することができたり、住職による精進料理教室が開催されたりしています。
儚く美しい沙羅双樹
本堂前庭には、十数本の沙羅双樹の木があります。沙羅双樹は仏教と深い関わりがあり、お釈迦さまが入定される際、一斉に花を咲かせてその死を悲しんだと言われています。沙羅双樹とは本来、インド原産のフタバガキ科の植物のこと。しかし日本では気候に適さないため、ナツツバキが沙羅双樹とされているのです。花の命は短く、朝に咲いた花は夜には落ちてしまいます。その儚さは、すべてのものは絶えず移り変わっていくという無常観を感じさせてくれます。
ご法話に耳を傾けながら
「沙羅の花を愛でる会」では、お抹茶や精進料理をいただきながら、庭を鑑賞することができます。見た目にも楽しい和菓子や、旬の素材を余すところなく使った精進料理をいただきながら過ごす時間は、何とも贅沢です。
また住職のご法話を頂戴できることも。ユーモアあふれる語り口調で、沙羅双樹と仏教との関わりや、命を生き切る大切さなどを説き聞かせてくださいます。ご法話に耳を傾けながら、心静かに一つまた一つと落ちていく沙羅の花を眺めてみましょう。