通常は非公開の文化財が特別に公開される、「京都夏の旅」が開催されています。2016年のテーマは「学校に残る文化財」と「お屋敷・庭園の美」。初の一般公開となる、ノートルダム女学院中学高等学校の和中庵を紹介します。
私邸から修道院になった和中庵
今年で41回目を迎える京都夏の旅では、7つの場所で文化財の公開が行われています。8月より公開の始まったノートルダム女学院中学高等学校の和中庵は、昭和初期に近江商人・藤井彦四郎の邸宅として建てられたもの。その後、教育活動のために来日し、拠点を探していたノートルダム教育修道女会が譲り受け修道院となりました。2008年に修道院としての役割を終え、大規模な改修工事を経て、ノートルダム女学院中学高等学校の教育施設として活用されるようになったのです。
レトロモダンな風格ある洋館
和中庵は哲学の道沿いから山側へと上った、鹿ケ谷の山裾にあります。外壁に大きな十字架がかかげられたユージニア館前で受付を済ませ、まずは洋館へ。蔵として使われていた建物を見ながら進むと、淡いクリーム色の壁とアーチ型の窓が印象的な洋館が見えてきます。スパニッシュ基調の建物で、1階には二つの洋間があり、2階には礼拝堂として使われていたホールがあります。大理石の階段や寄木細工の床、こまやかな細工が施された漆喰の天井は見物です。
庭園を見下ろす奥座敷「客殿」
洋館と奥座敷の客殿は、渡り廊下で繋がっています。山裾を切り開いて建てられた和中庵の敷地は傾斜があり、客殿は敷地の中でも最も高い位置に。二方向に広い縁側を持つ開放的な空間で、敷地内を流れる桜谷川を見下ろし、四季折々の素晴らしい景色を楽しむことができるのです。また鞍馬石と貴船石の大きな沓脱石や、鳥が描かれた床天井など、随所に豪商のこだわりが見られます。
和と洋のそれぞれの美しさが感じられる和中庵は、2016年8月23日(火)までの公開です。