秋も深まり、だんだんと日暮れが早く感じられるようになってきました。秋は一年で最も夜の長い季節。そんな秋の夜長を楽しめる、東林院の「梵燈のあかりに親しむ会」が今年も開催されています。
四季折々の風情ある催しを行う東林院
東林院は日本最大の禅寺である妙心寺の塔頭で、室町時代に武将・細川氏綱によって建立されました。初夏には美しい沙羅双樹の花が見られることから、「沙羅双樹の寺」としても親しまれています。通常は非公開ですが、初春の「小豆粥で初春を祝う会」と初夏の「沙羅の花を愛でる会」、そして秋の「梵燈のあかりに親しむ会」の期間は特別拝観が行われています。また東林院は宿坊となっており、喧騒から離れた静かな場所でゆったりと過ごしたり、精進料理をいただいたりすることもできるのです。
優しいあかりに包まれた本堂と庭園
「梵燈のあかりに親しむ会」が始まる18時になると、辺りはすっかり暗くなっています。梵燈は、瓦とろうそくを使った、ご住職手作りのあかり瓦。「煩悩を消し去るお寺の明かり」という意味が込められています。山門前で受付を済ませ、玄関庭園を通って本堂へ。沙羅双樹の庭や坪庭などを見ながら、蓬莱の庭へと向かいます。本堂内や庭園は、電灯を使わずろうそくの炎で照らされています。通常のライトアップとは異なる、ほの暗く幻想的な世界を堪能してみましょう。
梵燈の小さなともしびを見つめる
一番の見どころは、書院前の「蓬莱の庭」。中でも一際目を引くのが、梵燈で表された禅語です。今年の禅語は「秋風一味涼(しゅうふういちみりょう)」。秋の空に清々しい風が吹きわたり涼しげであることで、「心に一点のくもりもない様子」を表しています。
ろうそくの炎がゆらゆらと影を揺らし、時折虫の声が聞こえてきます。心静かにともしびを見つめ、「秋風一味涼」のように身も心も清々しい気分を感じてみましょう。「梵燈のあかりに親しむ会」は10月16日まで開催されています。