上賀茂神社は、神武天皇が道に迷われた際に導いたとされる「八咫烏(やたがらす)」と深く関わりのある神社。毎年9月9日には「重陽神事」と、まるで烏のような所作が見られる「烏相撲」が行われています。
導きの神である八咫烏
日本サッカー協会のシンボルマークとしても知られる八咫烏。かつて神武天皇の東征の際、賀茂建角身命(かもたけつぬみのみこと)が八咫烏の姿になり、道案内をしたとの言い伝えがあります。
上賀茂神社の御祭神・賀茂別雷命(かもわけいかづちのみこと)はその孫にあたり、境外摂社の久我神社には賀茂建角身命が祀られています。9月9日の重陽の節句に、重陽神事と共に行われる烏相撲は、八咫烏の故事に由来する行事。一風変わった作法を見ようと、毎年多くの人が訪れています。
不老長寿を願う重陽神事
9月9日の朝、境内のならの小川に入る子どもたちの姿がありました。子どもたちは烏相撲を奉納する相撲童子。禊を終え、神職や斎王代らと共に土舎でお祓いを受けます。
その後、本殿で重陽神事が執り行われます。重陽の節句は五節句の一つで、菊を用いて不老長寿を願うことから「菊節句」と呼ばれることも。神事では神前に菊花が供えられ、延命長寿や災難除などが祈願されます。
烏のように振る舞い、必勝を祈願
神事を終えた斎王代が、細殿へと入ります。細殿前の土俵には、相撲童子が西の禰宜方(ねぎかた)、東の祝方(ほうりかた)に分かれて並んでいました。
まずは刀禰(とね)による必勝祈願。笏(しゃく)で8の字を描きなぞるように歩く「地取(じどり)」が行われ、相撲童子の名簿である「差符(さしふ)」が読み上げられます。その後、まるで烏のようにピョンピョンと横跳びをしながら立砂の前まで移動し、弓矢や太刀などを立てかけていきます。そして立砂前に座り込み、「カーカーカー」「コーコーコー」と烏の鳴きまねをするのです。
全力でぶつかり合う烏相撲
ユニークな必勝祈願が終わると、烏相撲が始まります。取組みは各方から1人ずつが出る対戦形式で、一巡すると1人3戦までの勝ち抜き形式に。相撲童子は力いっぱいに押したり投げたりと、白熱した取組みを繰り広げます。参拝者は拍手や声援を送りながら、その様子を見守っていました。
当日は菊酒の振る舞いも。2018年の「重陽神事・烏相撲」は、9月9日(日)の午前10時から行われます。