桔梗は、秋の七草の一つとして古くから親しまれてきました。星形の花びらが特徴的で、6月から7月にかけて開花します。「桔梗の寺」で知られる、東福寺の塔頭・天得院を訪ねてみました。
歴史的大事件の舞台となった豊臣家ゆかりの寺
紅葉の名所として知られる東福寺は、臨済宗東福寺派の大本山です。その塔頭の天得院は、正平年間(1346~1370年)に東福寺の第30世住職であった無夢一清(むむいっせい)禅師によって開かれました。1614年には第227世・文英清韓(ぶんえいせいかん)が住職となり、豊臣秀頼の依頼で方広寺の鐘銘を撰文します。しかしその中の「国家安康、君臣豊楽」の文が、徳川家を呪詛し豊臣家の繁栄を願うとして家康の怒りを招くことに。この出来事は「方広寺鐘銘事件」と呼ばれ、大坂冬の陣・夏の陣の引き金となりました。寺は取り壊されてしまいましたが1789年に再建され、現在に至ります。
桔梗が咲く枯山水庭園
天得院は、通常は非公開のお寺。桔梗が見頃を迎える6月から7月にかけてと、11月の紅葉の時期にのみ特別に拝観することができます。見どころは、桃山時代に作庭された枯山水庭園。こぢんまりとした庭園は一面苔で覆われ、見る角度によって様々な表情を見せてくれます。
庭園は桔梗が見頃を迎え、青紫や白の花が苔に美しく映えていました。実に300本以上もの桔梗が見られ、日を追うごとに一つまた一つと花開いていきます。晴れの日はもちろん、雨に濡れて生き生きとした桔梗もまた趣が。縁側に座ってゆっくりと眺めたり、精進料理やお抹茶などを頂きながら楽しんだりすることもできます。桔梗を愛でる特別拝観は、7月10日(月)までです。