嵐山から北西に進むと、趣ある町並みが残る嵯峨鳥居本に着きます。このあたりはかつて化野(あだしの)と呼ばれた地域。茅葺屋根の茶屋や町家風の民家、そしてあだし野念仏寺があります。毎年8月下旬に行われている千灯供養を紹介します。
たくさんの無縁仏が眠るあだし野念仏寺
奥嵯峨の鳥居本は、古くから風葬の地として知られていました。あだし野念仏寺は、弘法大師・空海が野ざらしにされていた亡骸を埋葬するために、「五智山如来寺」という真言宗のお寺を創建したことに始まります。その後、法然上人が念仏道場を開き、浄土宗の念仏寺へと改められました。
境内には、多くの石仏や石塔が見られます。これらは明治時代に、化野一帯に散乱埋没していた無縁仏を集め祀ったもの。ずらりと石仏や石塔が並ぶ様子が賽(さい)の河原に似ていることから、「西院(さい)の河原」と呼ばれています。
晩夏の恒例行事「千灯供養」
あだし野念仏寺では毎年8月の23日と24日に、無縁仏の冥福を祈る「千灯供養」が行われます。日が暮れる頃から参拝者が訪れ始め、ろうそくを灯し、西院の河原の石仏や石塔にお供えします。
約8000体もの石仏や石塔が並ぶ西院の河原は、優しいろうそくの光に包まれます。風に揺らめく炎に照らし出される様子は、どこか神秘的で厳かな雰囲気。参拝者はそっと手を合わせ、亡くなった方々の冥福を祈るのです。
手作りの行灯が並ぶ、愛宕古道街道灯し
千灯供養に合わせて、嵯峨鳥居本では「愛宕古道街道灯し」が行われます。清凉寺から愛宕神社の一の鳥居までの道に沿って、行灯が並びます。
行灯は地元の人々や学生らによって作られたもの。可愛らしい絵やメッセージが添えられています。個性的で温かみのある行灯が、愛宕古道を彩ります。
初日の23日には、「太秦ひょっとこ踊りの会」の方々が踊りを披露。軽快な笛の音に合わせ、ひょっとこのお面をかぶった人々が練り歩くのです。その後、あだし野念仏寺近くの広場では盆踊りが。子どもから大人までたくさんの地元の人々が参加し、夏のひとときを楽しみます。