京都市北西部の山間には、5つの地域にまたがる「北山杉の里」が広がっています。その一つである中川地域から林道を進むと、エメラルドグリーンに輝く美しい池が。知られざる北山の秘境・沢の池を紹介します。
長い歴史を持つ林業のまち・中川地域
周山街道を北へ進み、紅葉の名所で知られる三尾を過ぎると、辺りの景色は一面の杉林へと変わります。北山杉の歴史は古く、室町時代から生産されているのだとか。北山丸太は京都の伝統工芸品の一つで、建築用材に用いられたり家具やグッズなどに加工されたりしています。
北山杉は、中川・杉阪・真弓・小野・大森の5つの地域で生産されています。中川地域は100世帯ほどの小さな集落で、集落の中心には清滝川が流れます。そして川沿いには、木材の加工や乾燥などを行っていた木造倉庫群が今も残されているのです。
古道・京道を辿って
周山街道が開通する以前は、中川から坂尻や千束を通って鷹峯へと続く京道(菩提道)が主要な生活道路となっていました。6㎞ほどの道のりを、集落に住む女性が日用品と交換する薪などを背負い歩いていたそうです。その様子からいつしか「女の道」とも呼ばれるようになったといいます。
中川地域にあるバス停・菩提道近くから、その道は続いています。車一台通るのがやっとの細い林道で、時たま地元の人の姿があります。道は川に沿って続き、途中には女滝や菩提の滝が見られます。坂尻へ向かう途中に分岐点があり、側道を突き当たりまで進むと、沢の池が見えてきました。
山の中にぽっかりと広がる沢の池
沢の池は人工のため池で、江戸時代末期に造られたと伝えられています。昭和50年代頃までは、地下水路を経て、田畑の農業用水として使われていました。現在は酸性雨の影響の調査や、遺跡の調査が行われる場所となっています。
沢の池は、北山杉が並ぶ山々に囲まれています。池ではキャンプや釣りをしている人の姿が。池の脇にある小道を通って奥まで進むと、池畔まで降りられる場所があります。透き通った水面に山々が映り込み、時おり心地よい風が吹きます。街の喧騒から離れ、ゆっくりと自然を感じられるスポットです。秋のお出かけに、沢の池を訪れてみませんか?