比叡山の裾に広がる一乗寺エリアには、修学院離宮や詩仙堂、曼殊院門跡などたくさんの見どころがあります。今回は、かつて松尾芭蕉が訪れ与謝蕪村らが眠る、金福寺を紹介します。
安恵僧都によって創建された金福寺
北白川通から比叡山の方向へ坂を上っていくと、住宅街の一角に金福寺の小さな山門が見えてきます。金福寺は864年に、円仁慈覚大師の遺志を継いだ安恵僧都によって創建されました。創建時は天台宗の寺で、大師自作の観音像が本尊として安置されていました。その後、荒廃しますが、江戸時代に圓光寺の鉄舟和尚によって再興。臨済宗南禅寺派の寺となり、現在まで続いています。
枯山水庭園で四季を楽しむ
石段を上り境内に入ると、すぐ左手に弁天堂があります。金福寺は、長野主膳を通じて大老・井伊直弼に反幕府勢力の情報を流していた村山たか女が、尼として生涯を終えた寺。弁天堂は、村山たか女によって創建されました。
中門を進むと本堂があり、その前には白砂と皐月の築山の枯山水庭園が広がります。庭園では皐月や桔梗、山茶花などの季節の花が見られるほか、秋の紅葉や冬の雪景色も見事です。本堂に座って、四季折々の景色をゆっくりと楽しむことができます。
松尾芭蕉ゆかりの「芭蕉庵」
庭園の東側の小高い丘の上には、小さな庵があります。これは俳人である松尾芭蕉ゆかりの「芭蕉庵」。松尾芭蕉が京都を訪れた際、親交の深かった鉄舟和尚は庭園裏手にあった草庵で芭蕉をもてなしました。草庵は「芭蕉庵」と名付けられましたが、その後は荒廃。俳人で画家でもあった与謝蕪村によって再興されました。
芭蕉庵の傍らには与謝蕪村など著名な俳人や画家らが眠り、芭蕉庵で詠まれた句を記した石碑があります。そして丘からは、京都の街を一望することもできます。俳人に愛された金福寺で、四季の移ろいを感じてみませんか?