若葉が芽吹き、優しい緑に彩られる初夏。京都は春の桜や秋の紅葉だけでなく、初夏の新緑もまた魅力的です。この時期ならではの景色が楽しめる、西京区の地蔵院を紹介します。
一休禅師ゆかりの地蔵院
嵐山から桂川を南に下った西山の麓には、お酒の神様を祀る松尾大社や世界遺産の西芳寺など、いくつかの古刹があります。その一つの地蔵院は、バス停の「苔寺・すず虫寺」から石段を上った先に。小高い丘に並ぶ住宅街を歩いて行くと、新緑の木々に包まれた山門が見えてきました。
「竹の寺」の愛称で親しまれている地蔵院は、1367年に室町管領の細川頼之公が、夢窓国師の弟子の宗鏡禅師を招いて建立しました。臨済禅宗の寺院で、一休禅師が幼少時を過ごしたことでも知られています。
緑一色に染まる境内へ
山門を通ると、参道に沿って見事な竹林が見られます。竹林を眺めながら、ゆるやかな坂を進み本堂へ。現在の本堂は1937年に再建されたもので、延命安産の地蔵菩薩が本尊として祀られています。
本堂は木々に囲まれ、辺りには鮮やかな苔の絨毯が広がっていました。境内一円は京都市の文化財環境保全地区に指定され、まるで森の中にいるような静けさと心地よさを感じることができます。
十六羅漢の庭を眺めて
本堂南には、細川頼之公と宗鏡禅師の墓が見られます。どちらの墓も自然石を積み上げただけの簡素なもの。石はすっかり苔むして、辺りの景色に溶け込んでいました。
本堂北側の中門の先には、方丈があります。方丈前庭は、宗鏡禅師が作庭したとされる平庭式枯山水庭園。羅漢に見立てた十六の自然石が置かれていることから、「十六羅漢の庭」とも呼ばれています。庭園もまた苔に覆われ、みずみずしい緑の葉が生い茂っていました。椿(胡蝶侘助)や千両などの木々も見られ、季節によって違った表情を楽しむことができます。
自然豊かな地蔵院で、初夏の景色を満喫してみませんか?