日蓮宗・大本山妙顯寺は裏千家・今日庵からほど近く、周囲には茶道具を扱うお店が立ち並びます。風情ある町並みの一画を担うこの美しいお寺は、江戸時代の画家・工芸家の尾形光琳ゆかりの地でもあります。
知る人ぞ知る名庭園
鎌倉時代後期、日蓮宗の開祖・日蓮大聖人の遺命により建立されたのち、戦禍で各地を転々とした妙顯寺は、安土桃山時代に秀吉の命によって、現在の寺之内に移転しました。
尾形家は妙顯寺の檀家であったことから、光琳の墓、光琳作の庭がありました。しかし、江戸時代の「天明の大火」により、妙顯寺は伽藍の大部分を焼失。その際に、光琳の庭も失ってしまいました。現在ある「光琳曲線の庭」は、宝物殿にある光琳作の松竹梅図の掛け軸を模して作られたものです。
本堂左の石畳を、鐘楼、菩薩像を眺めながらまっすぐに行くと、拝観受付の寺務所(方丈)があります。広々とした三和土(たたき)の玄関で靴を脱ぎ、ここから本堂内部をはじめ、孟宗竹の坪庭、光琳曲水の庭、四界唱導の庭、宝物殿(期間限定)へと進んで行きます。
左右に分かれる順路を左へ行くと、すぐに現れるのが、過去にはテレビCMの背景にも使われたことのある美しい竹の坪庭。この「孟宗竹の坪庭」は、ぐるりと四方を廊下に囲まれた空間に孟宗竹が20本ほど植えられているだけ。質素でありながら、しなやかな竹の美しい佇まいに目を奪われます。
さらに奥へ進むと見えてくるのが「光琳曲水の庭」。尾形光琳は現在でも人気が高く、海外の有名美術館に作品が所蔵されているほど。苔や松の緑の間から垣間見える優美な曲線に、どこか光琳作の大胆で斬新な構図の図屏風が思い浮かびます。
反対側へと回ると、貴人を迎えるために作られた「四海唱導の庭」があります。日当たりのよい広々とした縁側に座り、眼前に繰り広げられる石庭の雄大な景色を望むことができます。ここに流れる静謐(せいひつ)な空気に心癒されます。
本堂内部は豪華絢爛で、目を見張るものがあります(残念ながら撮影禁止)。僧侶が読経の際に叩き鳴らす金丸(かなまる)という仏具(大きなお椀のようなもの)を実際に鳴らすことができるなど、滅多にできない経験もできます。
春や秋にもぜひ拝観を
秋の紅葉シーズンには夜間拝観があり、境内の木々や庭園が色鮮やかにライトアップ。この時期には、毎年恒例の宝物殿の特別拝観、過去にはヨガ教室や庭園での演奏会なども開催されています。春の桜もまた美しく、隠れた名所です。
人気の写経教室は、年間を通して随時開催されています。